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第二章 隻眼のグルー
……闇の中の眼下の村には、人々の暮らしを示す灯りがちらちら光っている。
「そろそろ、いいだろう、行くぞ」
グルーが密やかな、だが鋭い声で言うと、仲間たちも静かに丘の下の村へと移動し始める。短剣をかざし、ひそやかに、だが素早く夜の丘を駆け下りる。やがて村の一番大きな家を囲むと、いきなり先頭の者が剣をふりかざしつつ、家の扉を蹴破った。
震えて家の片隅に固まる住人を包囲すると、銀髪を揺らしながらグルーが夜風が舞い込む家の中に現れた。グルーは精悍な顔つきを崩さず、愛用の短剣を抜きながら家の主らしき男に静かに問いただす。
「この村に病の者はいるか?」
「……い、いる」
「ではその者たちがいる場所を教えろ」
剣を首にかざされた男は、震えながら村の外れを指さす。その方向を見やると、みすぼらしい馬小屋とも見間違う家があった。
「よし、お前たち、確かめるんだ」
グルーの声にわっと仲間はその家に駆け出す。口々に叫びながら。
「病の者よ、恐れるな、我々は思えたちの仲間だ!」
その声を背後に聞きながら、グルーは襲った家の主に畳みかける。
「……あの家に病の者を押し込んだのはお前の命か?」
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