13.クラスメイト

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13.クラスメイト

高校生活が始まって1週間。 クラスの人数は32名で、男女は半々。 小学校、中学校とどちらかと言うと根暗キャラだった僕は、いきなり明るくなるのは無理でも、少しは人と喋れるようになった方がいいのかな、と思っていた。 隣の席の陸郎(りくろう)とは、話してみたら好きな漫画も一緒で、意気投合できた。 「タケルってさ、清水さんと付き合ってんの?」 休憩時間に急に聞かれた。「清水さん」とはほたるのこと。行き帰りが一緒だからか、あの二人付き合ってるらしいよ、という噂が立っているらしい。僕もほたるも、特に聞かれなければ「付き合ってます」と宣言するつもりもなかったけど。 「もともと幼馴染なんだけど、ちょっと前から付き合ってる」 「まじか!リア充だな」 「うーん、ほたるは元々人付き合いも得意で明るいけど、僕はリア充って感じじゃないよ」 「そうか?彼女持ちなんて、俺からしたらリア充だけどな、あ!」 陸郎がふと教室のドアに目をやり、小声で話してきた。 「ほら、あの子、すげえ美人じゃね?」 「ああ、絹さん」 「は?お前、あの美人と知り合いなの?同中とか?」 絹さんは、ドアの側にいる女子に話しかけていて、ちょっとザワツキ始めていた。 「中路(なかみち)くん、呼んでる女子がいるよー」 ドア近くにいた女子が大声で僕を呼ぶ。 「げ!あの美人、お前目当てかよ!!」 ほたるが怪訝そうに絹さんを見つめているのが目の端に見えた。 僕はドアの方に歩いていき、絹さんと廊下で話すことにした。クラスメイトが面白半分に耳をそばだててるのが気配で分かる。 「ごめん、彼女に誤解されたかも。6月のコンクールの課題曲で悩んでて、タケルくん何の曲にしたか聞きたいだけだったの。できれば、ちょっと相談に乗ってほしくて」 「いいよ、今日でも明日でも、放課後空いてるから」 「良かった、明日のレッスンだから、出来れば今日が助かるんだけど」 「そしたら、放課後下駄箱で待ち合わせでいい?」 「分かった。1組の下駄箱のあたりにいる」 「あ、待って。絹さん目立つみたいだから、傘立てのあたりにしとこう」 「ありがと。じゃあ、放課後ね」 僕が教室に戻ると、一斉にクラスメイトが僕を見て、男子がはやし立てた。 「やるなー中路!」 「そんなんじゃないよ」 僕は、そそくさと自分の机に戻り、色々聞きたそうな陸郎の質問攻めにあう。 今日は一緒に帰れないって、後でほたるに話さないと。
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