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第39話 巨匠のコンサート
ロンバルディ教授のコンサートは、さすが巨匠らしくほぼ満席。
僕と先生は、S席。巨匠の鼻息さえも感じられるのではないかと思われるくらいの、かなりいい席だ。
「先生、このチケットって…」
「うん、レッスンの後にロンバルディ教授に頂いたの」
「やっぱり…それで『ご招待』って書かれているんですね」
今日の演奏する曲は、モーツァルトのピアノソナタ、シューベルトの即興曲、ショパンの前奏曲、そしてスクリャービンの幻想曲。
「どの曲も楽しみね。あの鳥のさえずりみたいな音、モーツァルトでどんな風に響くのかしら」
「そうですね。スクリャービンって馴染みがないな」
「だよね。絶対に合うから、いつか弾いてほしいな。ラフマニノフよりスクリャービンの方がタケルくんに合うと思ってるんだよね」
スクリャービンは、ラフマニノフと同じロシアの作曲家だということは知っているけど、あまりこれ!という曲は知らない。
幻想曲、どんな曲だろう。
「あとは?知ってる?」
「はい。シューベルトの即興曲は中学で数曲やったし」
「うん、そうだったね」
客席の照明が落とされて、舞台の照明が一気に明るくなる。
大きな拍手に包まれながら、巨匠サミュエル・ロンバルディが登場。
ああ…とてもあのエロジジイとは思えない、なんという神々しさだろう。
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