15.世界デビュー

1/1
前へ
/140ページ
次へ

15.世界デビュー

ある日、汰央くんからLINEが入った。 「世界デビューしました!」 URLをクリックしたら、Youtubeの「Tao piano」チャンネルだった。 県外の私立中学に進学し、寮生活をしながらピアノを続けてる汰央くんは、はるか先生が超絶可愛がっていた生徒だった。 曲はバルトークのトランシルバニア舞曲で、彼らしい演奏に、個性を伸ばしてくれる先生に出会えたんだな、と感じた。春休みに会った時には、おばあちゃん先生なんて言ってたけど、いい指導者なんだろう。 コメントが早速ついている。友達とか門下生かな? 「Taoやべえ。こんな指って動くもんなのか」 「偶然見つけました。素敵な演奏!チャンネル登録しますね」 最初のは友達だろうけど、早速ファンもついてるみたいだ。やるな。 「Taoくんの演奏が動画でもいいから聴けるなんて嬉しい!新曲も楽しみにしています」 直観ではるか先生だと思った。名前は 『Haruka』 先生、マンマじゃん。ちょっと捻ったアカウント名にすればいいのに。 コメントを書こうと思ったけど、LINEで返事をすることにした。 「いい演奏だね、汰央くんらしい。バルトークがこんなにバリっと弾けると思ってなかった」 すぐに既読になって、 「これからはピアノもYoutubeの時代だよ!タケルくんも始めたら?」 いやーそんな自信はない。汰央くんの演奏はうまいだけじゃなくて、華があるからYoutube受けするかもしれない。 「早速、はるか先生からコメント来てたね」 「え?マジ?見てない!チェックする!!」 そのまま汰央くんとのLINEはストップした。僕は宿題を済ませてしまおうと机に向かって、30分くらいして、ふと「Tao piano」チャンネルを開いた。 コメント欄を見ていくと、友人に宣伝しまくっているのだろう、30くらいコメントが付いていた。 ハートマークがつけられているのは、汰央くんがそのコメントを読んで「ありがとう」の印。チャンネル登録します、と書かれたコメントには、丁寧に「ありがとうございます」と返事が書かれていた。 僕とのLINEが途切れたのは、Youtubeのコメント返しで忙しくなったからだろう。Haruka先生へのコメントにも返答がされていた。 「聴いてくれてありがとう。Harukaさんのために、これからもたくさん演奏をアップします」 汰央くんって、天然?計算?? さすがの僕でも、これは引く…
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加