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用意周到? 1
熱くて、柔くて、重みのあるキス。
一瞬で離れて、でも私が何とも否定を示さなかったからか、またすぐに押し付けられる。
「ん……」
唇を優しく食まれ、そっと舐め上げられる。動作の一つ一つがいやに艶めかしい。
こんな風に女の子に触れるなんて、全然私の知ってる瞬兄じゃない。そう、お兄ちゃんじゃない。
今私に触れているのは、一人の男の人で。
当たり前すぎることに今更気付く。
「ぁ、んむっ」
耳をすりすりされるのが堪らなくて、思わず吐息と共に大きく口が開いてしまう。そうしたら当然、口腔に厚い舌が侵入してきた。探るようにねっとりと口の内側をぐるりと舐め回される。それからびっくりして引っ込んでいた私の舌を見つけて、捕まえる。
舌先をきゅっと絡められたら、あっけなく私はその動きに従ってしまう。
このまま流されてしまって良いのか。今ならまだキスだけだしどうにかなるんじゃないか。
でもどうしよう、このキスすごく気持ち良い。
気持ち良いけど、でも付き合ってる訳でもないのにこんなこと。
頭の片隅で理性が問答を始める。
――――でも、知らない相手じゃないし。
いやいや、知ってる相手だから後腐れあってマズイんじゃん。
でも、後腐れあるような相手だからこそ無責任なことできなさそう。だって相手は瞬兄だよ?
いやいや、でもそれって自分の無責任さを相手に押し付け任せようとしてないか? 相手の責任だけじゃなくて、拒否しない以上自分にも責任とか覚悟とか。
「ひゃんっ」
ぐるぐる考えていたら、不意に降りて来た手が首筋を撫でながら胸まで来ていた。
変な声が出てものすごく恥ずかしくなる。瞬時にぶわっと顔が熱くなったから、きっとすごく赤くなっているだろう。更に恥ずかしい。
「紗名ちゃん」
キスだけならまだ誤魔化せる気がした。でもこれはダメだ。自分を誤魔化せない。
これは、確実にただならぬ段階に突入している。
「ひう」
ぐにゅっと優しく乳房を揉まれて、また変な声が出る。
「ごめん、嫌だったよな」
そうしたら、瞬時に顔を後悔で染め上げて瞬兄が身体を離そうとした。
びっくりしたよ。急だよ。瞬兄がなんでこんなこと私にするのか全く分からない。
物事には順序ってものがあるし、だからその口から聞きたいことがあるけど、でもその前に。
待って。離れていかないで。嫌じゃ、なかった。どうしよう。
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