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たった一人のためだけの筋肉 2
「瞬兄、足っ、足、着いてないの……!」
私の両足は床から浮いていた。瞬兄が自身の身体で持ち上げるようにしてるから。
下からの突き上げに一方的に翻弄されて、その激しい勢いを逃す術がない。
「足、これ以上痛めたら大変だろ」
私を慮ってのことらしいけれど。
「でも、踏ん張れなっ」
「快感は全部この身体で受け止めてくれ」
さらりと言われたけど、これ以上気持ち良くされちゃったら何を口走っちゃうか分からないのに。
「しんどかったら、しがみついても爪立てても構わない」
なのにそう言って、瞬兄は猛攻を再開した。
「あ、やらぁ! だめなんだってばぁ!」
言われた通り広くて厚い背中に腕を回すけど、立派な身体過ぎて必死にしがみつかないとすぐに振り落とされてしまいそう。
背の滲んだ広背筋。埋めた顔に当たる張りのある三角筋。
ナカを責め立てられる感覚でいっぱいいっぱいなのに、私の無意識の部分が激しい動きに躍動する筋肉を堪能しようとしている。変態でごめんなさい。
「紗名ちゃん」
熱い吐息が首筋をくすぐる。
「紗名ちゃんのナカ、すごいな。熱くてとろとろなのに、こんなにも締め付けてっ」
余裕のない声は聞いてるだけで熱が高まる。でも。
「瞬兄、なまえ」
「ん?」
「なまえ、ちゃん付けだとっ、子ども扱いされてるみたい」
紗名ちゃんと呼ばれるのは自然なことだけど、小さい頃の関係が思い出されてそれでは満足できない。もっと、近い距離で呼んでほしい。
子どもとはこんなことしないけど、と瞬兄は密やかな笑いが零してから。
「紗名」
唇を耳に押し当てながら、そう囁いてきた。
直接に鼓膜に流し込まれた甘い声に、脳がくらりとする。
「ははっ、すごく締まった」
「!」
心がきゅんと高鳴るのと連鎖して、欲望をみっしりと埋め込まれたナカが喜びを示してしまう。
「紗名、可愛い」
「うぅ」
無理、反応してしまう。
「世界で一番、可愛い」
自分では止められない。きゅんきゅんしてしまう。
「か、からかってるでしょ……!」
恥ずかしさのあまり叫ぶように言うと、
「本気で思ってる」
瞬兄の返答は至極真剣だった。
「紗名、紗名、可愛い。好きだ」
「んぁっ」
身体をまた揺さぶられ始める。言葉と行動で、瞬兄は私をどろっどろの愛情の沼に沈めようとしてくる。
「どれくらい、好きなの」
あんまり好きだ好きだと繰り返されるので、思わずそう訊き返してしまっていた。
「眼中に入れて欲しくて、自分の肉体改造をするくらいには」
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