その後の雄っぱいもとい瞬兄 3

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その後の雄っぱいもとい瞬兄 3

 身体を鍛え始めた動機は実に不純だ。  好きな子の視界に、それなら恋愛対象として入り込めるのではないかという打算。  でも、実は他にも色々良いことはあった。  まず、何と言っても身体に気を遣う生活は健康に良い。ただ鍛えるだけでなく、食事や生活習慣を見直す機会になった。  それに、体力もかなりついた。仕事はハードな時もあるが、身体が変わってから少し楽になったように思う。  迫力がついたのも悪くない。怖がられることもあるが、元々目元が柔らかい方なので、それも稀だ。  ただ、身体が大きいとそれだけで一瞬人は身構える。仕事や日常で舐められることが少なくなったと思う。海外での仕事が続いていたので、例えハッタリでも迫力があるのは良い方向に働いた。  トレーニングもそれほど苦痛ではなく、習慣化してしまえばリフレッシュの良い手段となった。  そして何より、この身体はちょっとやそっとではビクともしないのである。 「んっ、んん! 深い、深いの!」  紗名の身体が激しく震える。だが、こういう体力やバランス力、持久力が要る体勢でもこの身体ならヘバることもうっかり落として紗名を傷付けることもない。 「自重で! すごいの! あぁ……!」 「イヤか? やめるか?」 「やだけど、やじゃないぃ」  相反する返答。刺激の強さに息は詰まるが、それでもなお気持ち良さが頭を支配してしまうらしい。  手に入るなんて思ってなかった。  意識してもらいたくてここまで肉体改造したなんて、正直恋愛対象に入れてもらえる前に、ドン引きされて終わりかもしれないと思った。  海外勤務をしている間に、紗名が理想の相手を見つけて、そいつとの将来まで決めてしまうかもしれない。学生のうちは結婚まではいかないだろうとは思ってたが、そういう可能性だってあった。  だからあの日、久々に会って驚いた紗名の顔を見て、この機会を逃してはいけないと思った。  でも、こうして受け入れてもらえたのは、多分すごい奇跡なのだ。
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