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その後の雄っぱいもとい瞬兄 5
紗名を好きだと意識したのはいつだろう。
幼い頃からずっと一緒だった。お互い一人っ子だったが、でも瞬兄瞬兄と懐いてくれるのが可愛くて、本当の妹みたいに思ってた。
紗名がアニメやら絵本やらを見て、王子様役のキャラクターにあまり惹かれないことに気付いた時は、それほど何かを思った訳ではなかった。でも、更に年を重ねて、瞬兄はカッコ良いねと褒められた時に、あまり嬉しくなかったことに気付いた。
社交辞令みたいだと思った。
いや、実際はそうではなく、紗名は紗名で一般の感覚に当てはめてオレを褒めてくれていた。自分で言うのも何だが、元々の自分は細身で優男という見目だった。どちらかと言うと、紗名が興味を示さない王子様タイプに分類されただろう。
そう、紗名が興味を示さない。
そう思ったら、褒められても嬉しくなかったのだ。紗名の嗜好に自分は合っていないのだから、褒めてくれてもそれは紗名の好みという話ではない。
更に年を重ねて、紗名がアニメ等だけではなく実際の生身の男に興味を持ち始めた時、オレのすっきりしない気持ちは更に加速した。
ラグビーやアメフト、そう言った選手の素晴らしさを説かれる度に、面白くないと感じた。面白くなのは話がではなく、紗名の興味が自分には絶対に向かないことが分かったからだ。
それに気付いた時、自分の気持ちが妹的存在に向けるものから逸脱していることを自覚した。
それと同時に、ちょっと自分を疑った。
だって、年の差五つだ。その時紗名が中学二年生。自分は大学一年生。
いくら何でもマズイと思った。自分はロリコンではないはずだ。実際、紗名以外の若い子に興味を持ったことは一度もない。ないが、実際にはヤバいものと認識されることは分かっていた。
これに恋愛という名前を付けるべきではない。相手はまだ義務教育だ。下手に行動するとモラルの問題どころか犯罪の域になる。
気のせいではないかと思うようにしたし、実際それから距離も取るようになった。家を出たし、彼女ができたこともある。
実際、気のせいだったような気もした。でも、いつもどこか片隅に紗名の存在がチラついていた。
海外勤務となった頃、一人暮らしの部屋を引き払って実家に残りの荷物を預けた。その時、ちょっとだけ顔を合わせた。
高校三年生になった紗名は随分雰囲気も変わっていて。
顔を合わせたらオレは会わなかった間の反動か、却って自分の気持ちを否定できなくなっていた。
でも、自分は所詮隣のお兄さんだ。
紗名がそういう意味でしか自分を慕っていないこともよく伝わって来た。
そろそろどうにかしなくてはと思った。年齢を重ねれば五歳差はそれほど大きな障害じゃなくなる。振られるのは堪えるだろうが、いつまでもこんな風にうじうじしていられない。
――――告白を、しよう。でも、今のままのオレでは望みゼロだ。結果負け戦になったとしても努力はしたい。
そうして、別人と見間違われるほどの変貌を遂げて、オレは日本に帰って来た。
オレのこの粘着質というか、変態的と言うか、あまりに長すぎる想いを知ったら、今度こそ紗名はドン引きしてしまうのではないかと思ってる。
いや、びっくりはするけど、結局は受け入れてくれるかもしれない。良い方向に考え過ぎだろうか。
「んぅ、あっ、そこ好き……」
「もっと?」
「んぁっ、もっと、して……!」
オレの身体と紗名の身体は全然違う。薄い腹も細い腕も、なだらかな曲線も何もかも。その全てが愛しくて堪らない。
可愛くて、素直で、真っ直ぐで。
知っている。
紗名は少し気まずく思ってるみたいだが、別にオレの身体目当てでそれだけで陥落したんじゃない。優しくて大好きだった近所のお兄さんという前提があったからこそ、一つのきっかけでそれが恋愛の好きへとシフトしたのだと。
「あ、やだ、もうイっちゃうぅ」
「オレもまたイキそうだ……っ!」
小さな身体がまた快楽の高みに放り投げられる。何度味わっても気が遠くなるほど悦い、吐精を促さんとするぎゅうっとした締め付け。
「っは……!」
数度、快感に打ち震える身体に己を打ち込んでから、二度目の射精に至る。
「紗名、紗名……」
吐き出すものを吐き出しながら、余韻に震える身体を抱きしめる。
紗名にとって、自分が少しでも良い彼氏であれば良いと、そう願う。
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