見知らぬ筋肉もとい男性 3

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見知らぬ筋肉もとい男性 3

 記憶を大急ぎで掘り返す。  私の知ってる瞬兄はスラッとしたどちらかと言うと細身のお兄さんで、どちらかと言うと甘い顔立ちで、目元が優しくて……いや、この人の目元もよくよく見てみたら優し気だけどでもその印象が。体格が。全然違う。  瞬兄はムキムキマッチョではなく王道ヒーローに分類される系のイケメンだった。スポーツも、ラグビーとか柔道とかそういう類のものをやってた記憶はないし、身体を鍛える趣味もなかったと思う。  でもでも。  大学三回生でキャンパスが変わるとかで瞬兄が家を出ちゃって、段々疎遠になって、でもって就職後すぐに海外赴任になったって聞いたからここ数年まともに顔を合わせてない。  人間、数年合わなければ劇的なビフォーアフターがあってもおかしくない。のかもしれない。 「…………」  私から絶叫の気配が消えたからか、そっと覆っていた手を外される。 「――――瞬兄なの?」  恐る恐る訊ねてみたら、にこぉっと彼は破顔した。マッチョと笑顔の愛らしさがすごくアンバランスで、そのギャップがヤバい。心臓に変な負荷がかかる。 「紗名ちゃん、久しぶり」 「ホントに、瞬兄……ってえぇえぇ!?」  認められて、頭があぁこの人瞬兄なんだって認識して、いややっぱり信じられなかった。 「う、うそ、うそでしょ。だって別人だよ。本当に瞬兄なの? どうしちゃったの? なんで数年見ない内にこんな立派な筋肉こさえちゃってるの?」  いや、悪くはないけど。ステ筋肉だけど。中途半端でもない、かといってもやり過ぎでもないことが服の上からでも分かる良い塩梅な筋肉。私はそういうの、好きですけども。 「な、何があったの?」 「まぁ色々」  色々って何だろう。  一瞬誰だか分かんなかったってすごい変化だ。筋肉はここまで人を変えるんだなぁ、すごい、と感動を覚えてしまう。 「それより、紗名ちゃんどうしたんだ。よく見たらこの部屋――――」  途中で言葉を濁され、自分でも改めて部屋を見回してしまったと後悔した。
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