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迂闊な合法おさわり 3
いや、こちらこそそんなもの無料で見せて頂いてしまって済みません。ごめんなさい、目が釘付けです。
逞しい大胸筋、がっちりした上腕二頭筋、腹筋だってちゃんと六つに区分けされている。贅肉の気配のない、引き締まり鍛えられた身体。
「ドライヤー借りても? 隣だから上着羽織っておけば誤魔かせるとは思うけど」
「いやいや、乾かしていって。ちょっとのことでも外は寒いし! そもそも私のせいだし。私が乾かすよ!」
ヨダレが出そうになるのを抑えながらそう言うと、じゃあお願いしようかなとシャツを手渡してもらう。
まぁ乾かしますと言っても、結局ドライヤーを持って来てもらってコンセントに差してもらってと結局あれもこれもお膳立てしてもらってしまってるんだけど。
受け取ったシャツは上手いこと色が落ちているようだった。ホッとしながらドライヤの熱風を当て始める。
「じゃあオレはこの隙に紗名ちゃんの手当てをしよう」
「え、自分でする……!」
「待ってる間ヒマなんだよ。いいだろ?」
そうは言われても、実際心臓が落ち着かなかった。
だって、上半身裸のイケメンマッチョが膝を付いて私の素足を恭しく触ってるんだよ!?
これで何とも思わない筋肉好き女子いる!?
いかんいかん、心頭滅却、煩悩は彼方へ。心の中で呟きながら、手元のシャツに集中する。
でも、触られてる箇所にどうしても意識が持って行かれる。
子ども頃の感覚の延長線でいたけれど、よく考えたらいい年した男女がお姫様抱っことか治療とは言え素足に触れられるとか、況してや海でもプールでもないのに上半身晒してるとかどうなんだろう?
「ひゃっ」
とか考えていたら、湿布が肌に触れて反射的に声が出ていた。
「ごめん、痛かったか」
「ち、違う、冷たかっただけ」
いけない。ホントしっかりして、自分。この純粋に心配をして手当てをしてくれてる瞬兄の真面目で優しい目を見て。
邪まなことなんてチラとも考えていないだろう瞬兄に対して、筋肉がーとか言ってる自分本当にしっかりするべきだと思います。
「こんなもんかな」
「ありがとう、ごめんね」
湿布を貼ってもらって、それから少し遅れてシャツも大方乾いてきた。
「どうかな、いけるかな」
「…………うん、いけそうだな」
触って確認してもらって、ドライヤーの電源をオフにする。顔を上げたら、思わぬ至近距離に瞬兄の顔もとい上半身があってぎょっとした。
「あ、あの、これ」
「うん」
差し出したシャツを受け取る大きな手。その手がシャツを翻すと、動きに合わせて腹筋がきゅっと締まる。これは相当自分を律して鍛えているんではなかろうか。
服を着たらこの素晴らしい筋肉も見納めだなぁ、私が悪いんだけどイイもの見せてもらったなぁ。
瞬兄、ごめんね、こんな痴女で。
そんな風に思っていたら。
「触ってみる?」
何か幻聴が聞こえた。
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