四番目と九番目

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「お前は四番目に生まれた王女と、九番目に生まれた王子によって滅ぼされるだろう」  ある若い王の婚儀の日。  妃に迎えた姫と身も心も結ばれたその夜に。  寝室に現れた魔女はそんな予言を残し、消えた。 ◇◇◇  愛し合う王と王妃の間には、やがて子が。  一人目は王子  二人目は王女  三人目は王子。  四人目の王女は。  生まれて即座に殺された。 「王陛下……何故この様な……」  生まれたばかりの我が子を奪われた王妃は、悲しげな瞳で王に問うた。 「あの赤子は忌むべき子だ」 「あの魔女の予言を信じておられるのですか……?しかし……」 「完全に信じている訳ではない。だが、念の為だ」  五人目も王女。  六人目も王女  七人目は王子。  八人目も王子。  九人目に生まれた王子も。  四人目の王女と同じ運命が待っていた。 「王……何故、何故こんな酷い事が出来るのです……何故、血を分けた我が子を……」 「少しでも災いの種になるような可能性のある存在は、抹殺しなければならない……解ってくれ、王妃よ」 「解りません……私には……解りません……予言されたとはいえ……何故……我が子をそんな簡単に……」  悲しげな瞳で、王妃は泣きながら……一番幼い、まだ二歳になったばかりの八人目の王子を抱きしめた。  そんな王妃の周りには、彼女と同じく悲しそうな顔で寄り添う他の王子や王女達の姿があった。 ◇◇◇    九人目の王子が殺されて十年後。  それは、王妃が病で亡くなって数日が過ぎた頃に起こった。 「ぐ……はっ!」  玉座に座ったまま、王は胸元に刺さった剣を見下ろした。  刺されたばかりの胸元からは血が瞬く間に溢れ出し……剣だけでなく王の煌びやかな衣装も赤く染めた。 「な、ぜ……」  王の周りには、七人の王子と王女。  子供達が全て揃い、彼を見下ろしていた。  王を剣で刺した三番目の王子の後ろには、次の王である一番目の王子が。  彼は冷たい目と冷たい声で告げた。 「仇を討たせていただきました。王よ」 「か…たき…?」 「あなたに殺された兄弟達の仇です」 「…きょ…だい…だと…?」  一番目の王子の横に、二番目の王女が並んだ。 「愛する我が子を奪われたお母様の悲しみと悔しさ、少しは思い知ればよろしいですわ……お父様」 「な……んだと……」  ―お前は四番目に生まれた王女と、九番目に生まれた王子によって滅ぼされるだろう― 「もし死後の世界があるのなら、そして少しでも父や夫としての情が残っているのなら、母上と……そして名もつけてもらえなかった姉上と弟に、詫びて下さい。父上」  そう言ったのは、十二の歳になったばかりの、八番目の王子。  それが、王が最後に聞く言葉となった。  そして理解した。  あの忌々しい魔女の予言の、本当の意味を。
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