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ピリオド
「先生。5分だけ二人だけにしてもらえませんか。」
二人だけになった病室で目を開け弱々しく話を始めた。
「君と出会ったのは学生の頃だったね。」
「素敵な人で一目惚れ。」
「一方的に猛アタックするも玉砕。しかも何度も。」
「さすがに諦めようかと思ったんだけど、君から「実は好きでした」って卒業式が終わって家の前で言ってくれて、とっても嬉しかった。」
「その後はアルバイトをお互いしながら少ないお金でいっぱい遊び、いっぱいバカなことをしましたね。」
「婚約指輪はサイズを間違えて指に入らず、二人して涙を流して大笑い。」
「小さいながら結婚式も挙げれて
また君のドレス姿は恥ずかしくてあの時は言えなかったけどとっても素敵でした。」
「あれからもう何十年も経ちました。」
「いっぱい迷惑かけたね。」
「いっぱい心配させたね。」
「恥ずかしくてあんまり言ったことないけど」
「あなたが大好きです。」
「あなたを愛してます。」
「今でもこれからもずっとずっと。」
何万回、何億回とつないだ小さな手から伝わる振動。
涙で溢れた顔から時折見せる、作り笑顔。
「あの時交わした約束を覚えててくれたんだね。」
【どちらかが、逝く時は笑顔で】
「ぼくは幸せ者だ。」
そういって、目を閉じた。
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