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「な~んだ、片桐君じゃないか⁉ どうしたの? 君もこちらの局に用があったの? だとしたら奇遇だな」
片桐というのは、山本が依頼している探偵社の代表者だ。
山本を付け回している雑誌記者を尾行してきたところ、この局の正面玄関の駐車場にたどり着いたと言うことだ。
面長な顔がそう思わせるのか、決してイケメンとは言えないが、とてもシャイな感じのする30代半ばの片桐である。
「先生、今日はもうお帰りですか?」
社交辞令な会話と共に、山本と握手を交わす片桐は、身長170センチの山本より一回り小柄に思えた。
「そう、今終わったところなんで、局が手配してくれた車を待っているところなんだよ」
「そうですか・・それで、今日はお家に真っすぐお帰りですか?」
「決まってるじゃないか、帰る所ってそこしか無いじゃないか」
「そりゃそうですね、それなら良いでしょう⁉」
「何だね、今日は妙に謎めいて、どうかしたのかね?」
「エルベの芹沢ですよ・・」
「エルベ?って、君に依頼していた、週刊雑誌のあのエルベのこと」
「そうです、エルベの芹沢の車の後を追ってきたら、いつの間にかこちらのテレビ局の玄関駐車場に誘導されたってことですよ。
あれからもう15分も経つのに、一向に車から出てこないんでね・・それで・・きっと、先生を尾行するつもりで待っているんだと私は想定したんですがね・・でも自宅に帰られるのなら、尾行されても問題ないですよね⁉」
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