6人が本棚に入れています
本棚に追加
「今度買い替えるなら、是非セダンをお勧めするよ・・これじゃ二人も乗ると、車が真二つに折れちゃいそうだよ」
本気でそう思ったのか、山本は恐る恐るドアを閉めた。
「先生、それじゃ半ドアですよ! もっと思い切り閉めてくださいよ・・大丈夫ですって! そう、それでいいんです、それじゃ出発します」
片桐はこれまでも何度か山本を桑田京子のマンションまで運んだことはあった。
そのときの京子への手土産の殆どは、いつものお寿司だったのだ。
走り出した車中、山本は先ほどのテレビ局の担当者に電話を入れていた。
送迎の車が不要になったことを伝えてたかったからである。
山本の几帳面さが伺えるところだ。
いつものすし屋の前で、クーペは停車した。
「片桐君、少しだけ待っててくださいね・・直ぐに戻りますから」
そして山本だけがすし店に消えていった。
最初のコメントを投稿しよう!