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白の少女
「これ!私これ行ってみたいの!」
それは、熱混じりの風が部屋に入り込んでくるある日。
白に包まれたこの部屋には、1台のベッドと1人の少女。
部屋に溶け込みそうな程白くなった少女の髪が、窓からの風に波打つと共に興奮でベッドから飛び出そうとする少女の勢いで、まるで羽が舞い上がるかの様にふわりと浮かんでいた。
少女が興奮していたのは、手に持っていた1冊の雑誌だった。
「何?ヒマワリ畑?」
椅子に座った眼鏡の男が、半ば呆れ口調でその雑誌を見る。
雑誌の一面に大きく載っていた写真は、ここからそこまで遠く無い場所で行われてる催しについてだった。
夏、広い青空に浮かぶ白い雲に負けじと生えるヒマワリの群れ。
蒸すような暑さの、この今の時期にはぴったりの場所。
白髪の少女は、この場所に行きたがっていた。
「駄目だ。イトは外に出たら、体に何が起こるのかわからないんだぞ?」
「わかってるよ、ナオ叔父さん。でもいいじゃん、夢見たって」
イトと呼ばれた白の少女は、ふてくされたかの様に頬を脹らませて若干不機嫌そうな表情を浮かべる。
それを見る度、ナオは心を痛めていた。
病室に閉じ込められた少女は、消えてなくなるかもしれない未来について語っていたからだ。
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