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それにしても、銀行強盗に襲われる事件のさなか。
人質になった客五人。
その中に顔見知りがいるあたり、いかにも田舎のJAだな。
よく見りゃ、犯人、目出し帽脱げかけてて、顔が半分見えてるし。
テンパリすぎだろ。
つうかお前、小学校の時の同級生の斉藤じゃねえか。
犯人まで知り合いかよ。
去年の台風で畑がえらいことになったって聞いてたけど。
強盗するほど大変だったのか。
「ねえ……自粛さん」
自粛言うな。
隣にいた人質仲間のおばちゃんが話しかけてくる。
「あ、すみません。……警備員さん」
誤解を生む言い方、やめて!?
ほら、犯人がこっち睨んでるじゃねえか。
冗談じゃねえ。
俺は無害な自宅警備員ですよ。
おとなしく人質になってますよ。
床にうつぶせて、五体投地で服従をアピールしてみる。
すると、犯人はやっと俺から視線を逸らした。
あっぶねえ。
「プライドってものがないんですか、警備員さん」
ねえよ。命大事だよ。ガンガンいかねえんだよ。
「ワタシ、脱出する作戦を考えたんですけどね」
おばちゃんは、ひそひそと声をひそめる。
この人、井戸端会議で御近所に悪口触れ回るタイプだな。
ひそめた心算の、声がでかすぎる。
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