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「警察じゃあ!」
えっ……どこに!?
その叫びに、その場にいた全員が視線をウロウロとさせた。
なにしろ、ここは銀行。
そして銀行強盗に襲撃を受けている真っ最中。
包丁を構えた強盗犯が立てこもり、今まさに、カウンター越しに女子行員を脅しているところだ。
「ど、どいつだ!どいつが警察だ!」
うろたえた犯人が叫ぶ。
すると警察だと言った爺さんが、俺を指差して勝ち誇ったように叫んだ。
「警察じゃ!犯人め、貴様なんぞすぐ捕まる!この人は……」
え、俺!?
「――自粛警察じゃあ……!!」
それ警察じゃねえええ!
つうか、よく見りゃ隣の家の爺さんじゃねえか。
自粛警察とか、覚えたての言葉を使ってみたくてたまらなかった五歳児かよ。
意味、わかってねえだろ。
「いや……俺、警察じゃねえし」
「嘘じゃ!あんたのおっかさんが、そう言って自慢しとった!」
母ちゃん、何を近所に触れ回ってんだよ。
「いつも自分の家を守っとるって!」
それ自宅警備員んんんんん!
ああ、と何かを悟った顔をする周囲の人々。プラス犯人。
そして、目を逸らすな、目を。
その可哀想な子を見たっていう雰囲気もやめろ。
犯人にまで同情されてんのか、俺。
クソが。
あーそうさ、俺はニートで引き篭りの自宅警備員さ。
ちょっと生活費を引き出しに来たら、こんな場面に出くわした運の悪い男さ。
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