やまない雨の戯言

1/1
前へ
/2ページ
次へ

やまない雨の戯言

雨が降っている 夏を遮るように この雨はどこまで続くのだろう どこまで続いているのだろう あなたの住む町も、ずっと雨なのだと知る そしてまだまだこの先続くのだと知る 僕はどこか救われたような気がする どうしようもない卑屈な思いがそこにはある 僕だけ夏が来ない不条理をどうしても許せないでいる なんとあさましいことなのか それでも、僕はこの気分を改める気になれないでいる あなたが降らした心の雨は、どんなに暖かな思いでも凍えさせてしまう 僕には抗う術がない 降りしきる雨に体温を奪われながらもずっとあなたが来るのを待っている やまない雨はないのだと 僕はあなたに傘を差し出す どんなに僕がずぶ濡れになろうとも あなたの涙をみるくらいなら僕は傘でいよう あなたがあなたの待ち望んでいる人のいるところに無事に送り届けるために 雨がやめば傘は邪魔になる あなたはうっかり傘を置き忘れて街の中に去って行く 去り行くあなたを恨みもせずに僕はじっと、あなたから貰った日傘を眺めている いつになったらそれを使う日がやってくるのだろう そして僕は気づく 僕がそれを使う事はないのだと、あなたは知っていた 知っていて日傘を贈ってくれたのだと どうしようもない皮肉に僕はただ、ただ、哂うしかない 願わくば雨よ ずっと日の光を遮っておくれ やまない雨はないのだと知りつつも そう願わずにはいられない僕がいた 晴れた日を待ち望むあなたを思えばこそ 僕はずっと雨を降らす
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加