夏の日の忘れ物

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 「ばあちゃん、あのさ」  キョンちゃんのこと、きっとばあちゃんなら覚えてるかもしれない。  縁側でお茶を飲んでたばあちゃんの隣に腰かけて聞いてみることにした。  私のキョンちゃんとの記憶の中には、二人でばあちゃんからお菓子をもらった記憶も残っていたから。  私一人ならキョンちゃんと一緒に遊んでたことぐらいしか想いだせなかったから。    「キョンちゃんって知ってるかな? 私が幼稚園くらいまで時々、家の前で遊んでた女の子! わかるかな? いたよね?キョンちゃん」    私だけの記憶に残ってる子ではないはずだ、きっと。  そうは思っても不安は拭えなくて縋るように尋ねると。  ばあちゃんは驚いたように目を見開いて、しばらく何か考えて、それから。  「覚えてるんだねえ」  と懐かしむように、だけど寂しそうな顔で微笑んだ。  「キョンちゃん、京香ちゃんね、佐藤さん家のお孫さんだよ」    家の畑を挟んだ斜め向かいに見える佐藤さん家、そこにはばあちゃんのお友達の佐藤さんという老夫婦が住んでいる。  優しい笑顔の穏やかな佐藤の婆ちゃんは、私を見かけるたびにいつも。  「大きくなったね、リッちゃんいくつになったの? あ、お菓子があるのよ、ちょっと待ってて」  会うたびに呼び止められて私に箱のお菓子をくれた。  子供なんかいないはずなのに、それは全部子供向けお菓子で。  貰った私はただただラッキーと喜んでいたけれど。
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