友人から恋人へ

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ボサボサ頭の聡が怒った声で私の腕を掴み グルンと勢いよく自分の方に向きを変えさせた 「え?キスもしたよ」キョトンとする私を聡が抱きしめる 「あれじゃ足りない…よ」 いつも明るく柔和な聡が 今朝はやけに寂しそうな顔でキスをせがむ 軽く唇を合わせると不満げに 「なんでもっと早く起こさないんだよ」と私に文句を言う 「起こしたよ、1時間前から何度もね」 抗議する私の言葉を遮りまたキスをされる 「睡眠不足なんだよ、  あ〜っ、昨夜はもっと早く切り上げられたはずだったのに部長が…」 「帰って来たの午前2時だし聡、飲みすぎだよ」 「ごめん」 そろそろ、本当に出ないと遅刻しそうだ 今日は早めに空港に着きたいのに・・・ 私の頭の中は今日のフライトのことでいっぱいだった 「何、心ここに在らずって顔してんの?」 「ん?...だから、早く出ないと..」 「ダメ」 3度目のキスに突入しようとする聡を両手でぐいと阻止して 私は振り切るように玄関のドアを開けた 「じゃあ、今度は私が日本で待ってるからね  また空港で電話する」 聡が一番好きだという上目遣いのキラキラ笑顔で振り向くと やっと諦めたのか私に向かって小さく頷いた 「わかった、じゃ気をつけて」 聡は不満そうにしながらも最後は笑顔で私を送り出してくれた 「ヤバっ!本当に遅刻しちゃう!」 通りに出てタクシーを拾い、 私はCAとして最終フライトとなるJFK空港へと向かった
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