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私が聡の上司だというから失礼のないようにと緊張して話しているのに
聡ときたらただ嬉しそうに私と課長の話を聞いているだけで
何とかしてよと鋭い目線を送るが全く気づく様子が無い
こういう時は聡が私達の仲介役として
色々と気を回さなければならない役割なのに
さっきからグビグビとワインを飲み続け、
すでに4杯目に入っていた
「ちょっと聡、大丈夫?
お酒弱いのに飲みすぎじゃないの」
「うーーん、そうだね飲みすぎたかも
ちょっとトイレに行って来るよ」
聡は赤い顔で立ち上がると
数歩歩いた先で石が転がっている訳でも無いのにカクッと躓く
「おい高野君、大丈夫か?付いて行こうか?」
棚橋課長の言葉に慌てて首を横に振ると
意外としっかりした足取りで聡はレストルームに向かって歩いて行った
棚橋さんと二人で残され、
何を話そうかと視線を彷徨わせていると
棚橋さんの真剣に私を見ている眼差しとぶつかった
「・・・?」私はその空気に戸惑い黙り込む
「実はね今夜、仁科さんにここへ来て貰ったのは
私が君に話しておきたいことがあったからなんだ
このことは高野君は知らない
だから、これから話すことは私の勝手な独り言だと思って
嫌だったらそのまま忘れて貰って構わないから聞いてくれるかな?」
「はい」
何を話されるのか見当もつかなかったが
私は姿勢を正して坐り直し頷いた
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