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着いた場所はなんてことはない、俺の家の近くの公園。
しかもオシャレでもなんでもない、住宅地の奥まった所にある、古めの遊具が2、3あるだけの小さなところ。
すでにもうすぐ夕方で、他に人はいなかった。
(どこでもいいと言ってくれたとはいえ、バイトもまだ始めてない俺に金なんか無いしな…)
でも、場所なんかに関係なく、いざ二人きりになると緊張はもちろんするもので…
「え〜…何から喋ろう…?」
緊張して独り言まで声に出てしまう。
「…あ、煌野さ、いっつも早く帰るじゃん?バイト?」
「…アルバイト…?してない…」
「何か用事か…」
何をしてるか聞くのは悪いと思い、俺はすぐに別の話題を探した。
「じゃあさ、えっと…体弱いのか?体育出てないじゃん?」
「…弱くはないよ…」
「そっか…じゃあ火は…あ、えっと、今のは無し!」
これは聞いてはいけない気がして、急いでやめた。
「あ…じゃあさ、俺の話、していい??」
「…うん」
煌野と何かを話したいのに話題に困った俺は、今度はひたすら自分の話をした。
「…って、そんで水槽のメダカをうちの妹がさぁ…!」
ふと煌野を見る。
表情はほとんど変わらないように見えた。
「…煌野、つまんない…?」
俺は不安になる。
「…なんで…?」
「あの、いや、俺の話ばっかで、つまんないなら悪いからさ…」
「…ううん、楽しい…。布施くん、私に色々話してくれる…」
楽しいとは言ってくれているけれど、煌野の表情はやっぱりあまり変わらない。
「ごめん、俺ばっかりしゃべって…。その、煌野も聞かれたくないことがたくさんあるだろうし…聞いてもいいのか…」
「…布施くんの話は好き…。私の話は…嫌われると思うから…」
そう、煌野は自分のことを全くしゃべらない。
たぶんクラスのやつも他の周りのやつも、多分何も知らないはずだ。
「そっか…無理には聞かない。煌野がしゃべりたかったら俺に聞かせて?俺はまあ、煌野が聞いてて嫌じゃないなら、煌野にしゃべりたいだけだからさ」
結局、俺は外が暗くなる間際まで煌野に一方的に話をして、煌野は微かに頷きながら聞くという、俺から誘ったのにどう考えても煌野に悪いことをして、その日は別れることになった。
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