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「ほんとに、家の近くまで送らなくていいのか?」
「平気…今日はありがとう布施くん、さよなら…」
夕方の早い頃の月に照らされて見える煌野は、なぜか輝いて見えた。
そして、
「あ、うん。また明日!」
そう言って俺の家の方を見てからまた振り返ると、もう煌野はいなかった。
次の日も、用事はないと言った煌野を周りにバレないよう誘い、うちの近くの公園まで来た。
「ほんとはもっと、カフェとか行きたいんだけど金無くて…ごめん」
「平気。私、他に人いない方がいい…。それに布施くんの話、楽しいから…」
「あ、じゃあさ、しゃべるばっかじゃなくて、今度なんかして遊ぶか。その…人少ないとこでさ」
「え…」
煌野は困った顔をした。
「あ…嫌、かな…?ご、ごめん…俺がしゃべってばっかりだから、せっかくだから煌野が一緒にできる事が、とか…」
「…私、出来るかな…?」
「いいの!?…俺、考えておくよ!煌野が好きになりそうなの、見つけとく!」
「あ…ありがとう…」
煌野がなんか少しだけ、笑ったような気がした。
次の休み、宿題を終わらせて午後から会うことにした。
いつもギリギリにしかやらない宿題も、煌野に会うためにさっさと終わらせた。
「っし!!行くか!」
約束した時間にいつもの公園に行くと、煌野はもう来ていた。
いつもと違う、清楚な私服姿。
「ごめっ…待った!?」
「…平気…。良かった…」
「え?」
煌野は下を向いて言った。
「私が嫌になって、もう来ないんじゃないか、って…」
「そんなこと…!」
消え入るような声の煌野のその言葉を、俺はそう否定する。
「…布施くん、そんなことしない…。でも私…」
「約束したんだからさ。それに、煌野を嫌になったりしないよ。遊ぶって約束したろ?ほら!」
俺は思いついたありったけのおもちゃを出して見せた。
「まずは定番、携帯ゲーム機!使わなくなった妹のも持ってきた!2台あるから協力して遊べる!それから、ずっと昔に流行った光るヨーヨー!従兄弟の兄貴に教えてもらったんだけどさ!一通りマスターしたから教えてあげられる!前に知らないって言ってたろ?あとオセロとか…」
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