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「煌野は頭いいよね。体育免除なのに全体的に成績良いしさ。いつも夕方に帰るよな、夜は塾?」
「塾…行ってないよ」
「ウソ!?あんなに頭良いのに!?」
俺の言葉に、煌野は何でもない様子で返す。
「…私、布施くんには嘘付かないよ」
「なんでそんなに頭いいんだよ…。家庭教師とかいるの?夜に勉強したって俺、煌野みたいになれないよ、絶対」
「…。」
煌野はやっぱり黙り込む。
「言えないか…。俺は…聞きたいけど…でも、煌野が嫌なら無理に聞かない。ごめんな、嫌な思いさせて…」
「…私、他の人には別に嫌われてもいい。でも、布施くんには…嫌われたくない…。からかわないし、こんなに私に喋ってくれて、気も使ってくれたのに…」
「煌野…」
俺は煌野の気持ちが嬉しかった。だから、どんなに知りたくてももう答えたくなさそうなことは聞かない。
嫌われたくないのは俺も同じ、煌野に嫌われたくない。
でもすぐに、さらに謎が深まるような事が起きた。
なんだかここ数日、煌野は少し辛そうにしている気がした。
「煌野さ、最近、眠れてないとか?」
約束して会った公園で、俺は煌野にすぐにそう尋ねる。
「…なんでわかったの…?」
「え?ほら、なんか…今日も眠そうにしてたみたいだから…」
「…。」
煌野は少し顔を歪め、下を向く。
「今日は帰る?また明日にでも…」
しかし煌野はすぐに俺の顔を見てはっきりと言い切る。
「嫌!今日も布施くんと一緒にいたい…」
「え…」
俺は煌野が一緒にいたいと言ってくれて、とても嬉しかった。
しかし、本当にとても眠かったらしい。
俺が話をして間をしばらく開けていたら、煌野はベンチに座ったまま眠ってしまった。
(そっとしておいてあげよう…)
ベンチにそっと煌野の体を横たえて、俺の上着を枕にしてあげた。しかし少しすると、煌野はうなされ始める。
「…い、いや…!戻りたく…ない…一人は…嫌…」
「…煌野?」
俺は心配になり、煌野に声を掛ける。
しかし、
「助…けて…布施…くん…」
「え…」
「嫌あっ…!!」
煌野はうなされて跳ね起きた。
「大丈夫か、煌野…?」
「…。」
煌野の顔色は真っ青。そして呆然としている。
「煌野…」
「っ…私のことなんて、誰も見てくれない…!それなのになんで私、一人でいなきゃいけないの…!?嫌…嫌だよ…!帰りたくない…!!」
煌野は俺を見るなり抱きついて泣き始める。
かなり体が熱い。煌野の泣いた顔を見たのはもちろん初めてだった。
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