きらめきテレスコープ

7/9
前へ
/9ページ
次へ
 初めて乗った電車と見たことない景色に、煌野の目はキラキラして見える。  学校行く以外出歩かないそうで、かなり新鮮らしい。 (喜んでくれているみたいだな…あとは混んでないといいけど…)  電車から降りて少し歩くと公園に着いた。 「…キレイ…!」  そこは、木がたくさん植えてあり岩場が組まれて水が流れている、けっこう静かな場所だった。  平日なのもあって人も少ない。 「…この辺りって、もっと人がいると思ってた…」 「大きめな乗り換え駅が近いのにな!一本乗るだけで、こんな場所があると思わなかった…!」 「…水、涼しい…。私、寒いところは嫌い…すごく暑いところも…。でも、あの公園と、ここは好き…」  煌野は俺に向き直った。 「ありがとう、布施くん…連れてきてくれて…」 「よかった、煌野が喜んでくれて…!」  俺と煌野は近くに座り、ゆっくり景色を見ながら、時々しゃべって過ごした。  昼は近くにあった人の少ないカフェを探して食事して、また時々ゆっくり歩いて座って… (ずっと、こうしていられたらいいな…)  歩き廻ったりしなくても、遊園地みたいなのに行かなくても、こうして煌野とのんびり過ごせる… 「煌野、ありがとう。いつも俺に付き合ってくれてさ」 「…布施くんこそ、私といつも一緒にいてくれる…ありがとう…」  もう夕方になる頃、俺たちは空が良く見えるところにいた。  煌野は座ったまま悲しそうに俺を見て尋ねる。 「…ね、布施くん、夜空は好き…?」  突然の質問に、俺は少し戸惑った。 「え、夜空??うん、好きだけど…」 「…私…夜は好きじゃない…。今まで一人ぼっちで、消えたいと思っていたから…でも、布施くんがいてくれるようになって、ずっと一緒にいたいと思って、夜はなおさら嫌いになった…」 「煌野…」  なぜ煌野はこんなに悲しそうなんだろう? 「私、解放されたかった…。だから学校に行って、“役目”を放棄していれば消えられる、って…。でもこのままじゃ、私の存在が消えちゃう…」 「そんな…こと…」  俺は訳も分からず、何も言えずに煌野の話を聞いていた。 「布施くん、前に私に言ってくれたよね…?私のこと忘れたりしない、見つける、って…すごく嬉しかった…」  煌野の目からは大粒の涙が流れ落ちる。  俺はすぐそばに寄り添った。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加