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初めて乗った電車と見たことない景色に、煌野の目はキラキラして見える。
学校行く以外出歩かないそうで、かなり新鮮らしい。
(喜んでくれているみたいだな…あとは混んでないといいけど…)
電車から降りて少し歩くと公園に着いた。
「…キレイ…!」
そこは、木がたくさん植えてあり岩場が組まれて水が流れている、けっこう静かな場所だった。
平日なのもあって人も少ない。
「…この辺りって、もっと人がいると思ってた…」
「大きめな乗り換え駅が近いのにな!一本乗るだけで、こんな場所があると思わなかった…!」
「…水、涼しい…。私、寒いところは嫌い…すごく暑いところも…。でも、あの公園と、ここは好き…」
煌野は俺に向き直った。
「ありがとう、布施くん…連れてきてくれて…」
「よかった、煌野が喜んでくれて…!」
俺と煌野は近くに座り、ゆっくり景色を見ながら、時々しゃべって過ごした。
昼は近くにあった人の少ないカフェを探して食事して、また時々ゆっくり歩いて座って…
(ずっと、こうしていられたらいいな…)
歩き廻ったりしなくても、遊園地みたいなのに行かなくても、こうして煌野とのんびり過ごせる…
「煌野、ありがとう。いつも俺に付き合ってくれてさ」
「…布施くんこそ、私といつも一緒にいてくれる…ありがとう…」
もう夕方になる頃、俺たちは空が良く見えるところにいた。
煌野は座ったまま悲しそうに俺を見て尋ねる。
「…ね、布施くん、夜空は好き…?」
突然の質問に、俺は少し戸惑った。
「え、夜空??うん、好きだけど…」
「…私…夜は好きじゃない…。今まで一人ぼっちで、消えたいと思っていたから…でも、布施くんがいてくれるようになって、ずっと一緒にいたいと思って、夜はなおさら嫌いになった…」
「煌野…」
なぜ煌野はこんなに悲しそうなんだろう?
「私、解放されたかった…。だから学校に行って、“役目”を放棄していれば消えられる、って…。でもこのままじゃ、私の存在が消えちゃう…」
「そんな…こと…」
俺は訳も分からず、何も言えずに煌野の話を聞いていた。
「布施くん、前に私に言ってくれたよね…?私のこと忘れたりしない、見つける、って…すごく嬉しかった…」
煌野の目からは大粒の涙が流れ落ちる。
俺はすぐそばに寄り添った。
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