吸血種の少年の話

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ーーーーーー意識だけが、ぐるぐると渦を巻いて沈んでいく… *** オレンジ色だった陽の光がぐんぐんと紫に染まっていくビル街、急に暗くなるのが早くなった気がする。 そうか、気が付けばもう秋か。 軽く急ぎ足でコンビニに入店する。 「ケチャップとマヨネーズ…あと醤油とみりん…鶏ガラの素…」 全部同じ陳列コーナーに並んでいて、こういう時スーパーより探す難儀が無くて便利だなと感心した。 「ほんとなんでこんなに調味料ばっかり切らせるかな」 マスターが客からのオーダーで調味料がない事に気づき、開店直で買い出しに駆り出された。 開店準備の時あのおっさんは一体何をしてたんだろうかとぼんやり思いながらレジに通す。 客からオーダーされてから材料を買いに行くって料理店的にアウトだな…と思いながらコンビニを出るとこの街特有の香水の匂い、酒の匂い、…煙草の匂いが鼻を通る。 「あ゛~。吸いてえ゛」 客を待たせている事に心で謝りながら胸ポケットからメビウスを詰める。 自分でも最近ヘビースモーカーを自覚してきているが、こういう時の一本は尚更旨いんだよな。 ピリっと左手に痛みが走る。 「った」 コンビニ店員にサイズを間違えられた調味料群の入った袋がはりさけんばかりに袋を引っ張りあい重さも伴って、左手で持っていた手持ち部分のビニールが指に食い込んで血が滲んでいる。 そうだ、さっき包丁を扱った時に浅く切ってしまっていた。 血で汚れた袋を持ちかえて肺いっぱいに煙草を吸いこんで、ふーっと長めに煙を吹いた。 行きかう人を何も考えずに眺めていて、ふと向かいの出店で目が留まる。 別におかしな所は無いが、集団行動の中1人だけ違う動きをしている人物に意識を持っていかれるような感覚。 出店でスイーツを買うおじさん…出店の側面の方に小さな女の子、あと少年。 女の子と少年は楽しそうに会話しているだけなのに、何がとは言えない異質な空気を感じた。 目を奪われている間に出店の横路地裏へと2人が吸い込まれるように歩き出した。 "ついて行かなければいけない"と思った。
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