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「それではご注文を繰り返します。ほうれん草のソテーが一点。以上でよろしいでしょうか?」
「はい。お願いします」
いつもと同じ受け答えを終えて、わたしはカウンターにもどった。
ホールスタッフのバイトをはじめて、もうすぐ半年。始めた頃からずっと、毎週月曜夕方の六時半ごろに、一仕事を終えてやってくる陣内さんの注文を取り続けている。
今日は、七時五十分だったけど。
「また、ほうれん草のソテー?」
先輩の色黒大学生、小俣さんが聞いてきた。
「そうですね」
わたしはつれなく言って、カウンター越しに陣内さんを見た。
ここからだと、冴えない見た目のただのおじさんにしか見えないし、いつも白Tシャツにチノパンだから、なんの仕事をしている人なのか、だれにも分からない。
わたし以外は——
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