ばぁばの、ばあ

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ばぁばの、ばあ

 両手で顔を隠して、パッと開く。それと同時に、「ばぁばだよ、ばぁ」と言うのが祖母の癖だった。 『いない、いないばぁ』と同じ仕草だ。  私が幼い頃に認知症になった祖母は、私が高校生になっても私に向かって満面の笑みで言って来た。    「ばぁばだよ、ばぁ。」  私はお婆ちゃんが大好きで、お婆ちゃんの世話をする事は苦では無かった。高校生活の大半は認知症になったお婆ちゃんと共に過ごしていた。  寝る時も、同じ部屋に布団を並べて眠っていた。 「ばぁばだよ、ばぁ」  時々お婆ちゃんのその声に起こされる事もあったが、次第に慣れて行った。  まだ認知症になる前のお婆ちゃんの作る料理は、どれも絶品だった。枕元で昔話も聞かせてくれた。   童話から妖怪、幽霊、神様など、子供心をくすぐるお話は何度聞いても飽きなかった。 私はいつも、祖母と同じ布団で心地よい眠りについていた。  「ばぁばだよ、ばぁ。」  私が泣いた時、怒った時はいつも満面の笑みで言って来た。  「ばぁばだよ、ばぁ。」  私が女の子と言う事もあって、とても綺麗な白いカンザシをくれた事もある。  私はお婆ちゃんが認知症になってからも、それを時々付けて、見せてあげた。 「ばぁばだよ、ばぁ。」  その時のお婆ちゃんの笑顔はいつもより明るい様な気がして、嬉しかった。
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