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私の家は私と両親とお婆ちゃんの四人が住んでいた。
私の祖父は私が産まれる前に亡くなったそうだ。お婆ちゃんの好きな山菜を採りに出掛けた際、山から滑落して、即死だったようだ。
きっと優しいお爺ちゃんだったのだろう。
お婆ちゃんが私の世話をしていたのだが、母からの愛情が無かった訳ではない。母は寧ろ子育てを楽しみにしていたらしいのだが、「働けるうちは働きなさい。」と言う祖母の言葉に押されて、定年まで働き続けた。
父は会社を経営していた。忙しく、その上出張も多く、家にいない事が殆どだったが、優しい父だった。
お金に困る事も無かった私は、広い家でいつもお婆ちゃんと一緒にいた。
祖母の私に対する溺愛振りは相当なもので、母も時々心配していた程だ。
「お母さん、あまり無理なさらず、後は私がやりますから。」
「ええのよ。働きながらの子育ては、負担が大き過ぎる。この子の事は、任せなさいね。」
「お母さん、私があやしますから。」
「ええのよ、ほら、見ててごらん。ばぁばだよ、ばぁ。ばぁばだよ、ばぁ。ばぁばだよ、ばぁ。」
どちらかと言えば、手放さないと言った方が正しいかもしれない。その位、異常なまでの愛情を注がれていた。
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