ばぁばの、ばあ

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 私が社会人になる頃、徐々にお婆ちゃんの体調は良くない方へ向かって行った。  認知症では有ったものの、体は丈夫だったお婆ちゃんの行動範囲は次第に狭くなり、やがてベッドでの生活を余儀なくされた。  夜中に起きる頻度も増え、流石に睡眠に影響が出るという理由で、お婆ちゃんは一人きりの部屋で静かに過ごす事になった。  「ばぁばだよ、ばぁ。」  それでもお婆ちゃんは、私が部屋に居る時、時々はそう言って笑顔を見せてくれた。  私は社会人になってから、あまり世話を出来なくなっていた。ちょうど両親が定年を迎えたことも有って、お婆ちゃんのお世話は任せっきりの日々が続いていた。  そんな時でも、時々私が枕元に寄って行くと、  「ばぁばだよ、ばぁ。」  そう言ってお婆ちゃんは満面の笑みを私に向けてくれた。医者が言うには「条件反射」の様な事らしい。
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