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真夜中、夢から醒めた私は、全身が汗だくになっていた。鮮明に残る記憶を少しでも薄めたい私は、シャワーを浴びる事にしたのだが、シャワーを浴びていると、ふと何かの目線に気が付いた。
「……だよ。ばぁ。」
誰かが、見ている。声が聞こえる。
シャワーを止めると、その声の方に目をやった。すると、それは浴室灯だった。
浴室灯が、お婆ちゃんの満面の笑顔になっていた。
「ばぁばだよ。ばぁ。」
私を満面の笑みで見つめている。私は悲鳴を挙げて、慌てて浴室を出て灯りを消すと、恐る恐る浴室灯を除き込んだ。
そこにはお婆ちゃんの笑顔はなく、ただの暗くなった浴室灯があるだけだった。
しかし、私は気付いた。まだ、ある。
……まだ、聞こえる。
それは、リビングから聞こえて来る。
私はバスローブを巻いてリビングに行くと、その光景に絶句した。
室内灯、時計、テレビ、窓ガラス。全てがお婆ちゃんの顔になっていた。
そして、私を見ると声を揃えて言った。
「ばぁばだよ、ばあ。」
私は堪らず悲鳴をあげると、母親を探した。すると、台所の方から私を見つめたまま固まっている母親を見つけた。
バスローブで娘が悲鳴をあげている。それは、母親にとっても怖かっただろう。私は「ごめん。」と言った。
母親は「ふぅふぅ……」と息を切らしていた。手にはゴルフクラブを持っている。事の詳細を説明し、母親を落ち着かせると、私は病院に行く事にした。
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