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「寂しい・・・寂しい・・・」
真夏の燦々と輝く太陽の下、カモメのトフミは閑散とした海岸の上空を1羽ゆっくりと飛んでいた。
「毎年、この夏は大勢の人間がこの海岸に海水浴にやって来て泳ぎに来てるのに・・・」
カモメのトフミは、キョロキョロと海岸の辺りを見渡して溜息をついた。
「砂浜に御座敷いてパラソル開いて、寝そべっている人間が全く居ない!!
砂浜で山を作ったり、沖で水かけあいっこする人間の子供達が全く居ない!!
砂浜でバーベキューしたり、ビールや飲み物飲んでワイワイ楽しむ人間が全く居ない!!
海辺で、浮き輪やビーチマットやイルカちゃんに乗ってプカプカ浮かんでる人間が全く居ない!!
況してや・・・『海の家』が見当たらない!!
無い!!無い!!無い!!無い!!」
カモメのトフミは、毎年は海岸沿いにいっぱい店を開いて、海水浴客でごった返す『海の家』が存在していない事にすっかり取り乱した。
「『海の家』が無い!!『海の家』が無い!!『海の家』は、おいらにとってこの海岸の象徴的なものなのに!!
『海の家』!!『海の家』!!『海の家』!!『海の家』!!」
ばっ!!
「うわっ!!」
飛んでいるカモメのトフミの側に、一瞬黒い影が掠めてきた。
「おい、カモメ・・・よそ見をして飛んでるんじゃねーよ!!
すんでのとこでニアミス起こして危うく空中衝突しそうになったぞ!!」
「す、すいません!!カラスさん・・・あ・・・」
「あ・・・カモメ・・・おめえ・・・」
「カラスさん・・・いや、いつぞやカラスの『バル』さんでは?」
「おお!!『トフミ』!!何時逢ったような・・・と思ったら!!『トフミ』のオヤブンさんではありませんかっ!!」
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