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「いや・・・あのね、おいらの夏の楽しみだった夏祭りが悉く中止になったもんでね・・・
本当に夏祭りは人間の食べ残しを漁るかきいれ時なのにな・・・
で、幾らなんでも海水浴の海岸なら・・・と思ったら・・・やっぱりね。」
カラスのバルはカモメのトフミと燦々と夏の陽射しを浴びる中、ひと気の無い海岸をランデブー飛行して寂しそうに話した。
「本当にこの時期はお前と、海水浴客の食べ残しを漁ったり。」
「俺はそんな事しなかったぞ?」
カモメのトフミは一瞬ふくれた。
「やったじゃん!去年の海岸で、海の家の片隅に焼きそばの食べ残しを見付けて。」
「そうそう、でもあれは食べ残しじゃなかったぞ!?」
「あれ?食べ残しじゃなかったの?」
「あれは、海の家の『賄い』だったんだよね?」
「だからかぁーーー!!海の家の人間にあんなに血相変えて追いかけてきたのはーー!!」
「それにバルさん、あの時慌てて飛んだからそんとき、海の家に立て掛けてあった浮き輪を慌てて爪で掴んじゃってパンクさせちゃってさあ!!ビックリ仰天!!」
「かぁーーー!!そこ忘れかけてたのに!!恥ずかしいっ!!」
カモメとカラス。
2羽は、去年までの夏の海水浴の海岸でヤンチャしてまわった思い出をお互い語り合いながら、今は誰ひとり居ないこの海岸沿いを飛び回った。
「そうそう、あの岩場。そこで嘴にカニの爪挟まれたトフミの顔ときたら・・・ぷっ!」
「や、やめてぇ!忘れてよ!!」
そうこうランデブー飛行しながら話し合っているうちに、お互いの顔は段々曇ってきた。
「でも・・・今年の夏は何で誰しもいないんだ?」
「カモメのトフミよぉ・・・話しにくい事なんだけどさぁ・・・」
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