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「そうなんだ・・・」
カモメのトフミは、カラスのバルの不安を含めたその悲しげな顔を見て項垂れた。
「じゃあ・・・春先に海岸沿いの道路端で、車で来ている人間を地元住民が抑圧して騒ぎになった訳は・・・
今、その人間の間に感染が拡がってるていう新型ウイルスってやつが原因なのか。
この海岸に海水浴客が全く居ないのは。」
2羽は、去年の夏に焼きそば騒ぎを起こした海の家のある筈の場所に来ていた。
「ここだね。海の家の賄いの焼きそばがの入ったパックが積んでいた場所は。」
「ここが、俺がその焼きそば食らっていたのを店員に見つかって追いかけられて、脚の爪引っ掻けた浮き輪があった場所は。」
ざざーーーーーん・・・
ざざーーーーーん・・・
ざざーーーーーん・・・
ざざーーーーーん・・・
人間達が海辺ではしゃぐ声が消え、ただ打ち寄せては返す海鳴りだけが聞こえる中、カモメとカラスは、去年のこの海水浴の客でごった返す中、遊びまわったあのひと夏の思い出に浸っていた。
「虚しいね・・・」
「虚しい・・・」
「ねぇトフミ。」
「なんだよバル。」
「本当は、今年は街のお祭りにお前を招待して、一緒にヤンチャしたかったのに・・・これも新型ウイルスのせいで悉く中止になっちゃってさ・・・」
「誘ってくれるだけ有難いけど・・・何だか虚しいね・・・」
ざざーーーーーん・・・
ざざーーーーーん・・・
ざざーーーーーん・・・
ざざーーーーーん・・・
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