夏に溶ける

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夏に溶ける

 恋人と付き合い始めてはじめての夏を迎えた。ふたりで話合って休みを合わせて、近場ではあるけれども一緒に旅行に出かけた。  温泉街をゆっくりと観光して、ホテルにチェックインしてからすぐに温泉に浸かって、それからふたりでおしゃべりをしている間に夕食の時間になった。  海の幸が満載な豪華な料理を食べながら、恋人と昔は夏休みをどう過ごしていたのかという話をした。  恋人は、楽しかった思い出をいっぱい話してくれるのに、俺はなかなか話せなかった。  なんでだろう、楽しかったひと夏の思い出は沢山あるはずなのに、頭の中から溶けて流れ出してしまう。きっと、恋人とのひとときが楽しいせいだろう。  それを考えると、なんとなくぞっとした。
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