いたみ

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 千切られた左腕の止血を簡単に済ませ、杭打ち機を右の肩に担ぎなおしながら、考えずにはいられない。  何故だろう。近頃になって、妙な感触が胸の辺りにわだかまっているのが感じられるのだ。変調というにはあまりにも些細な違和感。その正体がわからないまま、心臓の位置を右手で押さえた、その時。  突如として響いた、絹を裂くような悲鳴にぎょっとする。  今回の標的は、今斃した吸血鬼だけのはずだ。索敵の術式を仕掛けても、それ以上の吸血鬼の反応はなかったはずではないか。  と、声が聞こえた方に視線をやれば、ランプを手にした見知った顔が、真っ青な顔でこちらを見ていた。 「……マノン」 「せんせえぇぇ! 腕! 腕どうしたんですか! 先生が死んじゃう!」  涙目で駆け寄ってきたのは、栗色の髪と目をした修道女だ。私よりも頭二つくらいは背が低く、手首など枯れ枝のように細い。きっと、私が力任せに触れでもしたら、簡単に消し飛んでしまうであろう、少女。  本当に、どこにでもいるような、少女だ。 「腕の一本程度で騒がないでください。止血は済んでいますし、縫合すれば元に戻りますから」
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