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落ちていた腕を拾い上げる。ずたずたに噛み砕かれてしまった傷口を見る限り、新しく作ってもらった方が早いかもしれない。これが何本目の左腕になるのかは、もう数えてもいなかったが。
それでも彼女は、自分の服が私の流す聖血で汚れるのにも構わず、必死の形相ですがりついてくる。
「それでも、ほら、すごい血ですし……っ!」
「この程度の出血は日常茶飯事です。それより、マノン」
意識的に声を低くする。
すると、彼女も私の言いたいことはわかっているらしく、身を竦ませて一歩下がる。
「宿でおとなしくしていなさい、とあれほど言ったはずですが」
「う、ご、ごめんなさい……。でも」
「『でも』ではありません。もし決着がついていなければ、私はあなたに意識を払った隙に殺されていたかもしれません。もちろん、戦う術を持たないあなた自身も危険に晒されることになります。わかりますね?」
はい、と。答えた彼女はうつむき、それきり唇を引き結んでしまった。本気で落ち込んでいるのは、流石にわかる。
言い過ぎただろうか。正しいことを言ったとは思うが、もう少し気の利いた言い方もあったかもしれない。
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