嫁入り前の娘達は

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嫁入り前の娘達は

 油蝉さんは、甲高い音で羽を震わせています。  蛙さん達は、大合唱です。  うるさいひと達から逃げるかのように、わたしは草葉の陰に身を潜めます。  川の向こうへ行っては駄目よ、というお姉ちゃんの言いつけを守っていれば、こんなことにはならなかったのに。  わたしはこれでも、一応嫁入り前の娘です。  昨日成人したばかりですけど。  わたしは、柳と紫陽花が静かに佇む川辺で生まれ、たくさんのきょうだい達と育ちました。大好物の貝を取り合い、喧嘩をして、お姉ちゃんになだめてもらって、賑やかに生長しました。  今となっては、懐かしい思い出です。きょうだいは、お姉ちゃんとわたしだけになってしまいました。衰弱だったり、はぐれたり、様々な理由できょうだい達とは悲しい別れになってしまいました。腐れ縁の男の子がいますが、そいつのことは関係ありません。  それは、さて置き。  どうしましょう。急に真っ暗になってしまいました。
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