3人が本棚に入れています
本棚に追加
嫁入り前の娘達は
油蝉さんは、甲高い音で羽を震わせています。
蛙さん達は、大合唱です。
うるさいひと達から逃げるかのように、わたしは草葉の陰に身を潜めます。
川の向こうへ行っては駄目よ、というお姉ちゃんの言いつけを守っていれば、こんなことにはならなかったのに。
わたしはこれでも、一応嫁入り前の娘です。
昨日成人したばかりですけど。
わたしは、柳と紫陽花が静かに佇む川辺で生まれ、たくさんのきょうだい達と育ちました。大好物の貝を取り合い、喧嘩をして、お姉ちゃんになだめてもらって、賑やかに生長しました。
今となっては、懐かしい思い出です。きょうだいは、お姉ちゃんとわたしだけになってしまいました。衰弱だったり、はぐれたり、様々な理由できょうだい達とは悲しい別れになってしまいました。腐れ縁の男の子がいますが、そいつのことは関係ありません。
それは、さて置き。
どうしましょう。急に真っ暗になってしまいました。
最初のコメントを投稿しよう!