【ゲーム"The gundog"の世界】 1845年 夏 邂逅

3/3
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
 視界からケイが消えた。  次の瞬間、奴の素早い回し蹴りで銃を握った両手を弾かれた。まずい、素手同士の戦いになってしまった。闇雲に拳を振り下ろすが当たらない。奴の肘が顔面に入る。くっそ鼻が折れた。鼻血が滴る。激痛でくの字に曲がった胴体の真ん中にすかさず中段蹴りがめり込み後方に吹き飛び僕の身体は勢いよく海に落ちた。  真っ暗な海に仰向けで沈み大量の海水を飲み死が頭をよぎる。必死で月明かりで照らされた海面から顔を出すと上から嘲笑うかのような奴の声がした。 「全く話にならねえな。そんなんで俺の(タマ)取れるわけないだろうが。出直してこい。」    ケイが踵を返して去っていく。奴が投げ捨てた煙草が海に落ちてジュッと音をたてた。  僕は折れた鼻の痛みに耐えながら泳いで岸にたどり着き、海水を吸って重くなった服を引きずりながらやっとの思いで波止場をよじ登ると暫く激しい呼吸が治まらなかった。  嗚咽と共に声が漏れ、やがて怒声ななる。 「畜生。あいつ、絶対にぶっ飛ばしてやる。ぶっ潰してやる。今に、今に見てろ。」  僕は自分の分身に復讐を誓った。 【アンサティスファイド・メタフィクション】 END  
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!