私を傷付けた、彼。

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   一瞬で目を奪われた。心を奪われた。    タイプだったのかと聞かれたら、特にそうでもなかった。  小柄で、まだ幼さが残る顔。その目には、不信感と恐怖を(たた)え、攻撃的な色をしていた。    惹きつけられた。理由も分からず、ただ、惹きつけられた。  私は今まで、口説くという行為をしたことがなかった。そんな私が、彼を口説くことに必死になっていた。    正確に言えば、この時点で私は、彼が(かれ)であることを、まだ知らなかった。  男。  女。  正直、どうでもいい。私に性別など、関係なかった。  一ヶ月かけて、私は彼を口説き落とした。 「落としたい」。そう強く思ったわけではない。ごく自然なことだった。    なぜかは分からない。  やはり、運命だったのだと思う。
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