私を傷付けた、彼。

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 でも、幸せは長くは続かなかった。  ある夏の夜。  空には、祭りの太鼓と(かね)の音が鳴り響いていた。  その日、彼は姿を消した。そして、二度と戻ってくることはなかった。    今でも私は、彼を思い出す。  勿論、彼が私に付けてくれた傷は、すっかり癒えてしまった。  もう、少しの痕さえ、残っていない。    あの痛みが、恋しくて、恋しくて、(たま)らない……。    できることなら、もう一度……。  何度も、何度も、そう願った。   でも、おそらくそれは、もう、叶わないのだろう……。
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