内海の遊女の設定と解説

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内海の遊女の設定と解説

※ザックリと簡略化した設定集です。 ※創作のなかにも史実が混ざっています。 ※史実的な用語もありますが、造語もあるので注意してください。 <沖の遊女・お千代> ・遊女:男性に性的な仕事をする女性。 ・旦那:ここでいう旦那は主に客のことを意味する。 ・水主(かこ):船乗り。身分が低い者は港で寝泊まりすることが許されない。 ・沖の遊女:沖に停泊している船で船乗りの夜の相手をする女性。下級遊女。  おちょろ船の遊女たちをモデルにしています。 ・船(大型船)と舟(小型船):ここでいう船は北前船のような帆が一つの大きな船の  ことです。  舟は()を使う手漕(てこ)き船を指します。 ・舟押し:沖の遊女を舟で運んだり、客から金を受け取ったりする遊女の管理者。  おちょろ船の漕ぎ手であるちょろ押しをモデルにしています。 ・おなごや:置屋(おきや)のことです。遊女はふだんここで生活しています。 ・足抜け:借金を返済せずに逃げること。 ・楼主(ろうしゅ):遊女の雇用主。遊女たちは『おとうさん』『親父どの』  などと呼ぶ。 <風待ちの港・(しお)待の港> ・内海(うちうみ):瀬戸内海のような海のこと。 ・風待ち・汐待ち:船の動力は風や潮の流れや満ち引きなどのこともあり、  環境が整わないと船を出港させられない。  そのため船乗りたちが、港町や沖の船の中でそれらを待つことを意味する。 ・お茶を()く:客が取れなかった遊女のこと。 ・三崎島(みさきじま):物語の中だけの架空の島。  モデルは大崎下島(おおさきしもじま)。 ・玉洗(たまあら)いの港町:物語の中だけの架空の港町。  モデルは御手洗(みたらい)の港。 ・べっぴんさん:港町の住人たちは親しみを込めて遊女をそう呼ぶ。 ・米問屋:米の売買を専門としている店。 ・浜仲仕(はまなかし):港などで荷物を運ぶ労働者。  明治前後くらいから沖から荷物を運ぶ沖仲仕(おきなかし)や  陸地で働く陸仲仕(おかなかし)へと動力船の運航と共に変わって行きました。   ・奉公:商家などに住みこみで働くこと。  仕える家によっては身分が必要。 <岡の遊女> ・岡の遊女:芸事や礼儀を仕込まれた女性。  身分の高い男性を客にできる。上級遊女。 ・遊女茶屋:吉原のような揚屋(あげや)より格下。  岡の遊女の仕事場。  玉洗いの港の遊女茶屋は、藩公認の若高屋・吉屋・三田屋・萩屋。  お千代が所属している店は一番規模の小さい萩屋です。 ・船頭(せんどう):船長のこと。船の最高責任者でもある。  商人自らが船に乗って取引していることもあるが、  雇われ船頭が商人に代わって荷物の売買をしている方が多いかもしれない。 ・張見世(はりみせ):茶屋の格子の内側に座って自分を客に見せる。 ・上見世(かみみせ)下見世(しもみせ):上見世は下見世より  少し座る場所が高く作られている。  遊女の人気により座る場所が決まっている。 ・内所(ないしょ):楼主一家が住んでいる場所。  遊女も奉公人も勝手に入ることは許されないところ。 ・くら替え:別の遊郭や遊女茶屋から移ってきた人のことをいう。 <住吉神社にて> ・女将さん:楼主の妻。遊女たちからは「おかあさん」「おふくろさま」  などと呼ばれている。  元遊女か商人の娘が楼主の妻になることが多かった。 ・常夜灯(じょうやとう):一晩中明かりが灯ってました。  港ならびに主要な街道には欠かせないものでした。 ・住吉神社(すみよしじんじゃ):住吉三神を祀っている神社。  航海の安全の神として、港町でよくみかけられる神社です。 ・住吉大社(すみよしたいしゃ):大阪府にある大きな神社です。  住吉三神以外の神も多く祀られています。 ・廻船問屋(かいせんどんや):商船を相手に商売をしている店のこと。 ・波止場(はとば):港周辺の海に作られている長い建造物。  昔は石を積み重ねてました。 ・端島(はしじま):玉洗いの港町から見える東隣の島。モデルは岡村島(おかむらじま)。 <沈む心と浮かぶ心> ・湯屋(ゆや):風呂屋。風呂付の家は少ないの港の住民は湯屋を  利用しています。 ・石榴口(ざくろぐち):風呂の温度を下がりにくくするための建築物。  みんなかがんで石榴口の下を抜けて浴槽に浸かっていた。 ・髪結い:専門職の髪結師が湯屋の近くで商売をしていました。  値段もそれほど高くはなく、人々の社交の場でした。 ・一張羅(いっちょうら):昔は余所行きの着物は一着あればいいという  考えでした。 ・遊女たちの談合:店同士、商売敵ですが、平和的解決をみな心掛けています。 <自分を売る交渉> ・三役(さんやく):船頭の下の三種類の役職のこと。 ・表司(おもてし):三役の一つで、航海中の進路を考え指示する  役目をしていました。  またその補佐として片表(かたおもて)という職の方もいます。 ・親仁(おやじ):三役の一つで、甲板作業の指導者。 ・知工(ちく):三役の一つで、事務方の責任者。  荷物や金の管理者なので責任重大でした。 ・沖の遊女の値段交渉:自分で金額を決めて客と交渉していました。  交渉が終わると、支払いは舟押しへと預けていました。  そして所属しているお茶屋で必要経費などを差っ引かれ、  仕事帰りに遊女のとり分を受け取ります。 <船宿と馴染みの船> ・船宿(ふなやど):宿泊施設であり、仕出し屋も兼ねている。  身分が高い船乗りしか泊まれないところもある。  馴染みの船が来ると主人自らが船まで呼びに行っていた。  風呂は湯女(ゆな)代わりの遊女に客の接待をさせていました。  宴会時にも遊女を呼び寄せ、夜は船頭のみが泊まることができた。  船頭は船宿から出る時に、祝儀(心付け)を置いていく。  値段は決まっていない。 ・(かしき):炊事係。水主になったばかりの者がこの仕事についていた。 <遊女たちの語らい> ・西廻り:3月くらいに大阪を出港し、青森や蝦夷(えぞ)で荷を仕入れ、  再び大阪に戻ります。  この間に各地の港町で売買をしながら航海をしていきます。  水主たちは、大阪につくと船頭以外はみんな徒歩で帰宅して、  次の航海まで船主の家の用事をしたり、湯治に出かけることもありました。    直江屋の船は北陸で冬越しをするので、まず最初に大阪へ行って  荷を(さば)き、  そして青森や蝦夷で荷を仕入れに向かい、また大阪へ行って荷を捌きます。  それから北陸に戻って冬支度です。  九州方面へと航海する船もありました。 ・東廻り:江戸までは一番早い航海路ですが、潮の流れなどで太平洋側へ  流されてしまうことがある。 <過去を振り返って> ・女衒(ぜげん):『これは!』という逸材の女子をを金で買う職業の人。  格式高い遊郭では、太夫(たゆう)になれそうな女子しか買わない。    女衒と提携している茶屋や遊郭によっては基準はマチマチだが、  貧乏人の娘だからと言って誰も彼も買うことはない。 <港での再会> ・雁木(がんぎ):海から陸に向けて階段のように石を積んだ構造物。  今はほとんどコンクリートのものに変わっているが、鞆の浦の港に  昔からのものが現存している。 <ふたりで店巡り> ・神の島:大三島(おおみしま)のこと。大山祇神社(おおやまずみじんじゃ)が有名。  近代まで漁業が禁止されていた。   ・塩:戦前は瀬戸内海は塩田が多く、北前船を通じて塩の産地でした。  今はそのまま放置されてたり、埋め立てられたり、太陽パネルが置かれたりと  見る影もない。  東北では昆布や数の子などで塩を大量に必要としていましたので、  北前船の者たちは、瀬戸内海で買いつけた塩を運んで利益を得ていました。   ・綿花:海を埋め立てて間もない塩気が抜けていない土でも育つので、  干拓事業を行っていたところでは盛んに生産されていました。  ただし肥料がたくさん必要だったため、ニシンなどの魚肥(ぎょひ)が  重宝されていました。 ・下津井:城下町より栄えていたという港。鰊俵(にしんだわら)を積んだ船が  多くやって来たそうです。  また近くの玉島の港にも鰊俵を積んだ船が行き交っていました。   ・鰊粕(にしんかす):ニシンを煮て、油が抜けるまで押しつぶして、  乾燥させたもの。  これを発酵させて作物の肥料にしていました。 <初音の悩み事> ・大夫(たゆう):遊女の最上位。 ・遊女たちの客の取り合い:ひとりの客にひとりの遊女が基本なのだが、  客が別の遊女と通じると、周りを巻き込んだ騒動に発展しました。  これは金が絡んでいるからです。  ひとりの顧客を取られると、その分実入りが減ります。  岡の遊女の借金は高額だったため、死活問題に関わることでした。 ・箱膳(はこぜん):食器入れ。食事をするときは箱のフタの上に食器を並べる。 <私を買ってくれますよね?> ・行李(こうり):荷物入れ。小物や着物とか入ってます。 ・この話での金について、500文とか書いてますが分かりやすくするために  あえてこういう書き方をしています。  本来なら500文だったら一朱金(いっしゅきん)(銀)ふたつ分くらいの価値になります。  一朱金一枚と百文って書いてもぱっとみで『いくらだよ?』って  ことになりそうなので、…作者自体が江戸時代の金勘定には疎いのです。  船乗りさんたちも大量の小銭を持ってるわけもないので、  金管理をしている弁蔵さんところで文以外の金も使って払ってると  思っていただければ助かります。  岡の遊女になると一分金(いちぶきん)や丁銀などの(もんめ)単位とかになるので、  そこはそのとき考えようと思います。 <心の傷> ・(みの):昔の雨具です。 <優しさの欠片> ・干し飯(ほしいい):炊いたあと、天日干しにしたもの。  そのままでも食べられます。 <番外編:寅吉の過去・前編> ・船磁石(ふなじしゃく):手のひらサイズの方位磁石です。 ・直江屋の船は沖乗(おきの)りなので、山口県の屋代島(やしろじま)の近くにある  愛媛県の津和地島(つわじじま)から島の港を経由するルートを運航してます。  地乗(じの)りは津和地島から広島県の下蒲刈島(しもかまがりじま)を経て、  本土の港に泊まっていきます。    泊まる港が少ない沖乗りは早く目的地へ着くことができました。  ただし、安全方面でいえば地乗り方が安定していました。 ・若い衆:ここでは色里で働く奉公人をさす。  年老いても若い衆と呼ばれます。 <番外編:寅吉の過去・後編> ・水主はだいたい十四、五歳からなれます。  炊からの仕事からのスタートです。  基本給のほかに、一年の仕事が済んで戻ればボーナスも  もらえました。  船頭の給金は一両か二両でしたが、載積量の一割分の自分の荷を  船に積み込むことが許されていたので、  上手く売り買いをすれば、百両のお金を稼ぐことができました。
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