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<読み書きを習いたい>
・年季明け:二十七歳くらい。松野さんは今の時点で二十五歳ということです。
<お千代と三郎>
・忘八:楼主のことをそう呼ぶ。
孔子の教えである仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌の
八徳を失った者という意味です。
<それでも私は遊女なんだ>
・船後家:菜売りという素人の売りから茶屋が管理する玄人へと変化しました。
幕府、もしくはその藩に無許可で春を売ることは禁止されていました。
江戸で言えば、吉原は幕府公認で岡場所は未公認でした。
・油壷:椿油などを入れた手のひらサイズの陶器。
<いろは唄と人助け>
・いろは唄:手習いの基本として使われていました。
・鉢かづき:シンデレラストーリーのような昔話。
・刎ね荷:船を軽くするために荷物を海に投げ捨てる行為。
・船箪笥:気密性が高く、海でも浮かびます。
持ち主が分かるように家紋などの装飾がなされていて
これを拾って持ち主へ渡せば、家一軒の褒賞がもらえたそうです。
<昔のままではいられない>
・結婚:男女が婚姻関係を結ぶこと。
江戸時代に結婚という単語は使われていなかったと思うが
他に何が…、と考えたけど文章に合わなかったので
分かりやすく結婚の単語を採用しました。
<人が忘れないこと>
・焚場:船の整備所のような場所。
主に船の修理を行っていました。
例えば、木製の船に付着する貝類や船虫を取り除くために
船底を燻したり焼いたりして乾燥させていました。
そうすることで船を長持ちさせていたそうです。
鞆の浦の干潮時にて、跡地をみることができるかもしれません。
・槙皮:マキの幹の内皮を柔らかく砕いたもの。
板のつぎ目の水もれを防ぐため使用していました。
・帆柱:帆を張るための柱。つまりマスト。
・すっぽん:船底から水を吸いだす道具。
帆柱の後ろに取りつけられている。
船の甲板から雨水などが漏れ入って船底に水が溜まるんだそうです。
水樽と呼ばれる大きな樽もありましたが、非常用に
溜めていたのかもしれませんね。
・神頼み:船には神棚や船仏壇があり、そこで拝んでいました。
<岡の遊女の理不尽な仕打ち>
・頓死:突然死のこと。
・遊女の借金:前金や利息や遊女として育てるために支払った
お金のことです。
昭和初期のころの話で、小学六年のときに前金で250円で
売られた少女が、十五の時には借金が750円に膨れ上がり
自分の不幸を嘆いて十七歳で自殺したという…。
この作品ではかなりマイルドに書いてますが、
実際はかなり暴利なものでした。
<向けられた狂気>
・おゆかり様:廓言葉でいう馴染み客のこと
<私が物語を語る>
・舟で客をとる遊女といえば船饅頭というものがある。
江戸の海辺で仕事をしていたそうです。
おちょろさんより有名ですね。
・御伽噺:桃太郎やカチカチ山などの昔話のこと。
<四つ折りの紙を開いて>
・木版画:版木に凹凸をつけて印刷する。
浮世絵なら二十四文くらいで購入できた。
<寅吉の意外な欠点>
・春画:肉筆や木版画なものがある。
有名な絵師の描いた肉筆の一点ものは高価でした。
木版画のものは大量に刷れる分、安価だった。
今回は葛飾北斎の春画からネタを引っ張ってきました。
未だにお千代同様に崩し文字が読めません。
・掛守:お守り袋のようなもの。色々な種類があります。
中に守り札などを入れたりします。
<茶屋での対決>
・文机:昔の勉強机。
<波止場で私は叫んだ>
・鍔やかん:かまどにそのまま置けるような形状に
なっていている。
・ふのり:海藻の一種。
うどん粉と一緒に湯で混ぜてシャンプー
代わりにしていました。
江戸時代は髪用の油を使用して髪を固めていました。
そして洗髪は十日に一回くらいだったらしい…。
<遊女の末路>
・幇間:客が遊女と会う合間に場を和ませる男芸者のこと。
太鼓持ちともいう。
・身請け:客が遊女を買い取る行為。
大夫などは一千両かかると言われている。
<唄と酒と男と女>
・惚れて通えば 千里も一里 逢えずに帰れば また千里
七・七・七・五形式で作られた都々逸。
芸者などが客席で歌っていました。
三千世界の鴉を殺し~…や立てば芍薬、坐れば牡丹~…
も都々逸です。
<来訪者あらわる>
・木賃宿:素泊まりの安い宿。
ほかの客と雑魚寝が多いと思われる。
<太一の真意はどこに?>
・地廻り:盛り場などでぶらついてるならず者。
<それぞれの思い違い>
・陰間茶屋:陰間という男娼が仕事をしている店。
役者見習いなどが所属していた。
陰間は主に若いうちは坊主などの相手をし
二十くらいになると空閨を持て余す女性の
相手をしていました。
商売上、痔で苦しんでいたようです。
<彼女のうわさ>
・よしず:葦で作られた日よけ。
大きな物なので立てかけて使います。
・甘酒:麹や酒粕などで作られたもの。
栄養ドリンクのように夏に飲んでいました。
ちなみに冬でも飲みます。
<小波の主張>
・遊女への仕置き:まだ使えそうなら傷をつけない
拷問をします。
足抜けになると、逆さ吊りにして竹で上半身を
叩く『ぶりぶり』といわれる仕置きをするところも
あったようです。
遊女が拷問を受けて死ぬと、病死や自殺と同じ
ように投げ込み寺に捨てられました。
・十両の盗みで即死罪:落語などに十両盗めば首が飛ぶ
という台詞があるように、打ち首確定でした。
<笑う弥彦>
・首を斬り落とすときの役人の台詞:本当にあった。
広島藩の樽ヶ鼻の刑場で実際に行われていたそうです。
<それをくり返して得たものは>
・磔刑:本編で書いたので割愛。
・一ト切:約十分。ちょんの間は十分から十五分らしい。
・針での拷問:遊女の場合つめの間や太ももの内側など
見えない箇所に差し込むそうです。
<番外編:弥彦の考察・前編>
・金を稼ぐなら鉱山か船に乗ればいい:危険度の高い職だけど実入りが良い。
鉱山の場所にもよりますが、女性も働いてました。
今は機械である程度は危険性も少なくなってますが、それでも山を削るのは
命の危険を伴います。
別の話で石見鉱山では少しでも銀をちょろまかせば即打ち首だったそうです。
女性が遊女として使い捨てられていた時代、男性もまた危険な仕事でたくさんの
人が命を落としてました。
・寺のありかた:葬式や法事の仕事以外にも、周辺の檀家たちのもめ事や
どんな人が暮らしてるのかを把握してたり、通行証を出したりと
お役所仕事のようなことをしてました。
また寺の住職の子を養子に迎える商家などもあったそうです。
<祭りに心をうばわれて>
・遊女たちも祭りを楽しんでいたことについて:モデルにしています港町で
遊女たちも祭りに参加していたという記録だけで、小説の内容は創作です。
休みも盆と正月意外にあったのかは定かではない…。
<祭り前の岡の遊女たち>
・地唄舞:日本舞踊のひとつ。
江戸後期の作品や現代に新しく考案されたものもあります。
気になった方は動画などを検索してみてください。
<三社祭りにて>
・定式幕:お芝居などの幕のことを指しますが、ここでは
お祝いごとがあるときに家の表に飾り付ける幕のことです。
・神輿:動画サイトでみたモデルの港町のお祭りを参考にさせてもらってます。
<番外編:三郎と初音・後編>
・切目縁:縁板を敷居と直角方向に張った縁。
<慰霊祭のあとで>
・寺での慰霊祭:ここでの創作です。
ですが赤穂の黒崎墓所のように、島で亡くなった方の供養をしてたと思われます。
モデルの島のみどころにおいらん公園があって、亡くなった遊女の墓ではないか
というものを公園内に整理しています。
<浮世の習い>
・生者必滅会者定離:仏教の教えのひとつ。
作中にて解説しているのでここでは割愛する。
<寅吉の現状について>
・はぎつけ:船の横に取りつけられている波よけの板。
その外側には垣立という垣根のような囲いがある。
<寅吉と弥彦:其の一>
・出来銀:町立銀行のようなもの。
町出来銀勘定帳は大店が管理していると書いたが創作である。
モデルの港町では、町の発展のために商人たちが自発的に
生み出した制度だったが、十八世紀末に藩の役人が口を挟む
ようになり、商人たちが自由に運営できなくなったそうです。
・藩札:作中にて解説しているのでここでは割愛する。
西日本では銀でのやり取りが多かったそうです。
作中でもそれに合わせて二朱金ではなく、二朱銀にしています。
<寅吉と弥彦:其の二>
・花魁道中:花魁直々に引手茶屋まで旦那を迎えに行くこと。
さらに花魁の付き人も共に迎えに行くので大行列になる。
モデルの港町の道は田舎道そのままに狭いのですが、
それでも花魁道中をしていたというから驚きしかない。
浮世絵で描かれているような大きな傘では、
通り抜けできないと思う。
<夕暮れの三郎>
・格の上がった遊女のこと:吉原で行われていたことのを
参考にしました。
とにかく借金が雪だるま式に増えていくシステムとなってます。
・遊女が死んだら?:投げ込み寺っていっても、
死体を放置していくわけではありません。
どういう名の女かというメモと、金を置いて行きます。
自殺や心中した女は、メモに売女と書かれたりします。
そしてその罵倒の文字が戒名になるとかならないとか……。
<番外編:初音のこれから・後編>
・藍染:藍色の染料で染められたもの。
色褪せにくい特性を持つ。
植物の藍が原材料。
・弁柄:酸化鉄顔料。
鉄鉱石をあれやこれやして作ってます。
赤い色に近いほど価値があるそうです。
道路のカーブなどのアスファルトの赤色も弁柄を使用してます。
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