本編

2/90
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
 初めてサラと会ったのは、陽の当らない、闇夜に包まれた路地裏だった。  ホームレスの俺を面白半分で殺そうとしてきた屈強な男二人が、一瞬で首から鮮血を噴き出しながら殺された。  ギラギラと光るナイフと、舞う、背まで伸びた黒髪が印象的な、十六、七歳くらいの女だった。戸惑いもなく、影から突如姿を現したかと思うと、躊躇なく二人の喉元をナイフで一閃したのだ。  感情の機微も感じさせない深い青の瞳と、飛び散った赤黒い血は、よく映えた。見開かれ、瞳孔がしまった、残酷な瞳。  黒の外套から覗く両足は黒いレースをまとっており、なるほど機動性が高そうに思える。  俺の第一印象は、ただただ舞踏のように人を殺す人だ、というものだった。  二人が絶命したのを見届け、彼女はろっ骨が折れ、身動きできない俺を見下ろす。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!