気になるあの子

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あと五分あったら。 そう思いながら、僕はあの子を見送った。 ああ……今日もあの子に声をかけることが出来なかった。 桜塚線、青葉駅7:20発の先頭車両。左側前方の出口付近にいつもあの子は立っている。 僕が乗り込むと、その五分後にあの子は電車を降りる。 そのパターンに気がついたのは、ずいぶん後になってからだ。 あの子と電車に乗っている時は、時間があっという間に過ぎてしまう。五分もあったなんて信じられないくらいに。 僕はその間ずっと電車の振動に細かく揺れるあの子のポニーテールを見つめ、今日こそは、今日こそはと声をかけるタイミングを見計らうのだが、まさに声をかけようとした瞬間、いつもプシューッと開くドアに阻まれる。 首筋を隠すように揺れるあの子のポニーテールが、ドアの向こうへ消える最後の瞬間まで、僕はあの子から目が離せない。 どうしても気になって仕方ない。 何故なら、彼女の見え隠れするうなじにはいつも【てんとう虫】がくっついているからだ。
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