24人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな彼との間に何が起きたのか。
遡ること30分前。
取引先との懇親会後、彼の方から「少し飲みませんか」と誘われた。
一課の営業はほとんど参加していたので他の人も来るのだろうと何も考えずに賛成した。
ところがあろうことか彼は私にしか声をかけていなかったのである。
私は彼と2人きりという状況に喜びを感じつつも戸惑っていた。
何故なら、
私は好きな男性の前では異常なまでにツンケンしてしまうのだ。
そもそも愛想の良い方ではないが
社会生活を営むにあたって支障が出ないくらいには愛想を出すこともできる。
でも好きな男性の前では愛想の「あ」の字も無くなってしまうのだ。
せめて「あ」の字くらいあって欲しかった。
50音の一番最初の文字なのだから。
アルコールのせいではない脈拍を感じながら彼の少し後ろを歩いていると
「ここ、よく来るんです」と彼が店に案内してくれた。
最初のコメントを投稿しよう!