私には可愛げがない

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切れ長の目が私を捕らえる。 近くで見るとかなり睫毛が長い。 綺麗ーー。 「綺麗、ですね」 「え」 心を読まれたのかと思ったがどうやらそうではないらしい。 「佐伯さんと一度二人でお話ししたかったんです」 佐伯さんって誰?と一瞬考えたが彼の言う佐伯は私の名字だった。 つまり、彼は私と話してみたかったと。 そして私を綺麗だと言った。 自分の名前を忘れるほどに動揺していた私だったが彼の言葉により 私の頭の中にブラジルが大陸移動してきてカーニバルが開催される。私の中のブラジル人がサンバを踊る。 何を言っているのかよく分からないだろうが、それだけ私の心は浮き足立っていた。
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