ひと夏の思い出 アイスの棒

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ひと夏の思い出 アイスの棒

私はこのひぐらしの鳴き声が好きだ 夏の暑い熱気が徐々に和らぐ時間の夕焼け空と 空に浮かび始めた星の空の中間に向かって なんとも言い難いその切なげな鳴き声に 私は哀愁を感じ 昼間容赦なく焼かれた肌がヒリヒリと感じ始め その肌が海の塩に引っ張られてより痛みを感じ 肩や鼻の頭なんかは今だに焼かれ続けているような 火照りを感じ 友達と別れて一人自転車を漕いでいる コンビニで買ったスイカのアイスを頬張って 口の中で幸せを感じながら 柔らかく風を切り、一人海岸線を帰る ひぐらしの鳴き声の微かに先に踏切の音が聞こえる 砂浜に寄せては帰っていく波自体の音と 小さな石や貝殻をさらっては戻す音 夕日に照らされた海はきらきらと光を反射して 街は少しずつ明かりが灯り始め 車のヘッドライトやテールランプが目立ち始める 食べ終えたアイスの棒に “あたり”なんて文字がないのを確認して 今日の夕飯は何かなーと考えにふけっていると こんばんは そう声をかけられた
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