ナツキ

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俺は日陰で涼むため、神社の本殿裏側に回った。 「はあ…」ギンギンと太陽が光る空を眺めた。今年の夏も相変わらず暑い。 俺は夏が嫌いだ。自分を『夏樹』と名付けた祖父を恨むほどに。 人に名前を呼ばれる度に、過去の嫌な記憶が余すことなく蘇る。 それは俺にとって、どうでもいいようで、重大なようで。なんだか居心地の悪いものだった。 遠くで、また風鈴の音がする。俺は目を瞑り、静かにその音を聞いていた。
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