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僕は、本当にどこにでもいる大学生なんだ。
「なあ、大樹。お前、大学入ったらバイトするのか?」
「もちろんだよ。無理言って、独り暮らしさせてもらったんだ。家賃分くらいは、自分で稼がなきゃ、親父にぶん殴られる。」
中学時代から仲の良い、仲本倫也と二人、無事に希望の大学への入学が決まって、卒業式から大学が始まるまでのこの期間に、大学の近くへ引っ越しだ。
今日は、僕。明後日は、倫也。ちなみに、倫也の住む予定のマンションは、ここから歩いても10分くらいで着くところだ。
「そうだな。俺も、小遣いせびれる様な状況じゃねぇから、バイトだな。」
「お互いに苦労するね。」
「本当だわ。」
引っ越しを手伝ってもらったお礼に、駅前にある大手バーガーショップで、今月オススメされてるスペシャルなやつを奢った。
「うひゃあ!噂に違わず、豪快だな、このバーガー!」
「そうだね。」
にこやかに答えた僕の視線は、倫也の後ろの席にいた男性に釘付けになったんだ。
その人は、SNSに、このバーガーの写真をあげるのか、写メを撮っていた。
納得した写メを撮れたのか、スマホを置くと、自然な動きで、手を合わせていただきますとばかりに、バーガーにかぶり付いた。
このバーガーは、ボリューム満点で、間に挟まってる具も半端ないんだ。なのに、彼は、とても綺麗に一口目を口に放り込んだ。
そして、なんとも言えない笑顔で満足そうに食べていた。
僕は、自分の分をかぶりながら、彼から目が離せなかったんだ。
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